【歌詞・動画付き】とても特徴的なニュージーランド国歌

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クライストチャーチのモスクで起きたテロから2週間をむかえた昨日、大規模な追悼式(national remembrance service)が開かれました。

そこでスピーチを行ったニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相は、国歌の歌詞の一節を引用してスピーチを締めくくりました。

そこで今回はニュージーランドの「国歌」の話をしてみたいと思います。

ニュージーランドの国歌は日本と違ってちょっと珍しい特徴があるので、ぜひお付き合いいただければ幸いです。(動画だけ見たい方は、このコラムの最後をご覧ください)

この記事の目次

ニュージーランドの国歌は2つある

New Zealand Flag

「国歌」は英語で “national anthem” ですよね。「どこどこの国の国歌」と言う場合は、

  • national anthem of Japan:日本の国歌
  • national anthem of New Zealand:ニュージーランドの国歌

のように、”national anthem” の後ろに “of+国名” をつけます。

国歌って普通は1国に1つですよね。でも、ニュージーランドの公式な国歌は2つあるんです。

  • God Save the Queen(神よ女王を守り給え)
  • God Defend New Zealand(神よニュージーランドを守り給え)

Wikipediaによると、国歌を公式に2つ持っている国は世界に2つだけだそうです。その1つがニュージーランドなんですね(もう1つはデンマーク)。

この2つの国歌のうち、古くからあるのは『God Save the Queen』ですが、現在ではエリザベス女王や王室の人が居合わせる場でしかほとんど使われないので、国民に馴染みがあるのは圧倒的に『God Defend New Zealand』です。

式典やラグビーのニュージーランド代表チーム「オールブラックス」の試合を含むスポーツの国際試合で歌われるのも『God Defend New Zealand』なので、耳にしたことがある方もいらっしゃると思います。

実際に2011年のラグビーワールドカップ決勝戦で歌われたときの映像がこちら↓

ちなみに『God Defend New Zealand』は国歌として作られたものではなく、もとは詩人のトーマス・ブラッケン(Thomas Bracken)という人によって1870年代に書かれた英語の「詩」なんです。

それに音楽をつけたものが時代とともに広く知れ渡りポピュラーになったため、1977年に正式な国歌に追加されました。

ニュージーランド国歌『God Defend New Zealand』

上の動画を見て「あれっ?なんて歌ってるの?」と思った方もいると思いますが、それもそのはず、前半の歌詞は英語ではありません。マオリ語です。

公式な場ではニュージーランドの公用語であるマオリ語英語の両方で歌われるのが一般的です。

そして、あまり知られていませんが、国歌斉唱の際は手話が付きます。マオリ語・英語・ニュージーランド手話の3つがニュージーランドの公用語だからなんですね。

この国歌は1番から5番まであるのですが、歌詞が全編英語バージョンの『God Defend New Zealand』と全編マオリ語バージョンの『Aotearoa』とがあります。

その各バージョンの1番の歌詞(first verse)だけをつなげて歌ったものが上の動画になるわけですね。1番だけを2つの言語で歌っているんです。

公の場ではこのパターンで歌われることがほとんどで、2番以降が存在することを知らないニュージーランド人もいるぐらいです。

そんな中、昨日行われたテロの犠牲者追悼式典では、マオリ語で1番・2番が歌われ、その後に続いて英語の1番と2番が歌われました。これはとても珍しいことなのですが、それには理由があるんです。

モスク銃撃テロの追悼式典で歌われた国歌

通常1番しか歌われないのに、なぜ1番だけでなく2番も歌われたのでしょうか。

その理由は「2番の歌詞」にあります。冒頭でふれた首相のスピーチに引用されたのも、英語バージョンの2番の歌詞だったんです。

これは、式典の主催者が、式典で国歌を歌うMaisey Rikaさんに「2番の歌詞も含んで欲しい」と依頼したようです。実際に追悼式典で歌われた様子はこちら↓(2番から再生されるようになっています)

E Ihowā Atua,
O ngā iwi mātou rā
Āta whakarangona;
Me aroha noa
Kia hua ko te pai;
Kia tau tō atawhai;
Manaakitia mai
Aotearoa

Ōna mano tāngata
Kiri whero, kiri mā,
Iwi Māori, Pākehā,
Rūpeke katoa,
Nei ka tono ko ngā hē
Māu e whakaahu kē,
Kia ora mārire
Aotearoa

God of Nations at Thy feet,
In the bonds of love we meet,
Hear our voices, we entreat,
God defend our free land.
Guard Pacific’s triple star
From the shafts of strife and war,
Make her praises heard afar,
God defend New Zealand.

Men of every creed and race,
Gather here before Thy face,
Asking Thee to bless this place,
God defend our free land.
From dissension, envy, hate,
And corruption guard our state,
Make our country good and great,
God defend New Zealand.

太字にした部分が英語バージョンの2番の歌詞(second verse)です。
もとが「詩」だけあって、私には日本語に訳すセンスがないので、ポイントとなる英単語の意味だけ書き出してみたいと思います。

creed:信条
race:人種
gather:集まる
Thy:そなたの、汝の
Thee:そなたに、汝に
bless:(神が)加護を与える
dissension:人々の間の意見の相違・衝突
envy:妬み
hate:憎しみ
corruption:道義に反すること、不正

アーダーン首相はこの部分を引用して「ニュージーランドが完璧な国だとは言えない。でも私たちは国歌に深く刻み込まれたこれらの言葉に忠実であるよう努力することができる」とスピーチを締めくくりました。

今回のテロと結びつく “creed”、”race”、”hate” などが含まれているこの2番の歌詞で、ニュージーランドが大切にしている価値観「インクルージョン」を改めて国民に示したのではないかと個人的には思います。

『God Defend New Zealand』の歌詞(マオリ語&英語)

最後に『God Defend New Zealand』の英語フルバージョン(歌詞付き)を含む動画をお届けします。

私はこの動画を初めて見たときに「ニュージーランドの国歌って美しいなぁ」と鳥肌が出ました。ニュージーランドの豊かな自然の映像だけでなく、verseを追うごとに重なる歌声がとても素晴らしいです。

まずはマオリ語で1番が歌われ、そして次に英語のフルバージョン1番から5番全てが歌われています。

3番の “Peace, not war, shall be our boast” という部分をはじめとして、”peace” や “love” という単語がよく使われていて、全編を通してニュージーランドが誇る価値をよくあらわしているのではないかなぁと感じます。

歌詞は動画にも付いていますが、最後に全歌詞を書き起こしていますので、そちらもぜひ味わってみてくださいね。

E Ihowā Atua,
O ngā iwi mātou rā
Āta whakarangona;
Me aroha noa
Kia hua ko te pai;
Kia tau tō atawhai;
Manaakitia mai
Aotearoa

God of Nations at Thy feet,
In the bonds of love we meet,
Hear our voices, we entreat,
God defend our free land.
Guard Pacific’s triple star
From the shafts of strife and war,
Make her praises heard afar,
God defend New Zealand.

Men of every creed and race,
Gather here before Thy face,
Asking Thee to bless this place,
God defend our free land.
From dissension, envy, hate,
And corruption guard our state,
Make our country good and great,
God defend New Zealand.

Peace, not war, shall be our boast,
But, should foes assail our coast,
Make us then a mighty host,
God defend our free land.
Lord of battles in Thy might,
Put our enemies to flight,
Let our cause be just and right,
God defend New Zealand.

Let our love for Thee increase,
May Thy blessings never cease,
Give us plenty, give us peace,
God defend our free land.
From dishonour and from shame,
Guard our country’s spotless name,
Crown her with immortal fame,
God defend New Zealand.

May our mountains ever be
Freedom’s ramparts on the sea,
Make us faithful unto Thee,
God defend our free land.
Guide her in the nations’ van,
Preaching love and truth to man,
Working out Thy glorious plan,
God defend New Zealand.

(Ministry for Culture & Heritageのウェブサイトより)

■マオリ語の歌詞の意味はここでは割愛しますが、気になる方は姉妹サイトの『日刊ニュージーランドライフ』をご覧ください。

■「インクルージョン」やニュージーランドが大切にしている価値については、以下のコラムで詳しく紹介しています↓

■「手話」「手話通訳者」の英語表現はこちら↓

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