“they” の意味といえば「彼ら、彼女ら」ですよね。
ところが、”they” は必ずしも複数の人を表すわけではないんです。
今回はそんな “they” の意味と使い方のお話です。
複数ではない “they”
少し前にコロナ関連のニュースを読んでいると、以下の文章に出会いました。文章の登場人物は何人なのか考えてみてくださいね。
- this particular person was admitted to hospital on the 1st of November and they discharged themselves from hospital on the 3rd. −One News
どうでしょうか?
この文章に出てくるのは「1人」です。ある人が11月1日に入院して、その人は3日に退院した、と書かれています。
では、なぜ1人なのに “they discharged themselves” になっているのでしょうか?
「その人」を意味する単数の “they”
“they” は複数に使う代名詞で、意味は「彼ら、彼女ら」と学校では習いましたよね。
ところが、単数に使う “they” もあるんです。上のニュースに出てきた “they” はこの使い方です。
この意味を英英辞書ではこんなふうに定義しています↓
used instead of he or she to refer to a person whose sex is not mentioned or not known
(オックスフォード現代英英辞典)
つまり、性別を言わない場合や性別が不明だったりする場合には単数でも “they” が使われるんですね。
上のニュースに出てきた文章をもう一度見てみると、
- this particular person was admitted to hospital on the 1st of November and they discharged themselves from hospital on the 3rd.
この「入院した人」の性別は明らかにされていません。なので、”he discharged himself “でも “she discharged herself” でもなく、”they discharged themselves” と書かれているんですね。
他にもある、単数に対して使う “they”
性別を “he” や “she” に限らないということで、こんな “they” の使い方もあります↓
used to refer to a single person whose gender identity is nonbinary
(Merriam-Webster Dictionary)
性自認が男性でも女性でもなく、どちらかの枠組みに自分を当てはめないノンバイナリーの人にも “they” を使うんですね。上の辞書にはこんな例文が載っています↓
- Jay won the contest, and they are elated!
これは「Jayさんはコンテストで優勝して大喜びした」という意味ですが、Jayさんはheでもsheでも表せないので “they” となっているんですね。
こんな単数の “they” を受ける時のbe動詞は “is” ではなく “are” になることが多いです。つまり “they is” ではなく “they are” ということですね。
“anyone”、”everyone” などを受ける “they”
また、性別を特定しない単数に対して使う “they (them/their)” は、”anyone”、”no one”、”everyone” を受ける場合にも登場します。
例えば、英英辞書の例文を引用すると、
- If anyone arrives late they‘ll have to wait outside −Merriam-Webster
- If someone calls, tell them I’ll be back soon. −オックスフォード現代英英辞典
- Everyone should do what they think is best. −Cambridge Dictionary
これらは口語でよく使われる言い方で、”he or she” と言うこともできます。ただ、ちょっと長くなるので代わりに “they (them/their)” も使われます。
この使い方の “they (them/their)” は一般的によく使われるので、無意識のうちに使っていた方もいらっしゃるかもしれませんね。
「彼ら/彼女ら」で訳すと意味が分からなくなってしまう場合は、単数の “they” を疑ってみてくださいね。