「ディナー」と聞いて皆さんは何時くらいを想像しますか?
我が家は子どもが小さいので5時すぎなのですが、会社勤めをされている方だと遅いと8時、中には9時過ぎを思い浮かべる方もいるのではないでしょうか。ほとんどの人が「ディナーは夜食べるもの」だと思っているはずです。
ところが「ディナー」というカタカナ語の元となった “dinner” は必ずしも夕食ではなく、昼過ぎに食べるご飯も “dinner” と呼ぶことがあるんです。
今回はそんな “dinner” という単語をきっかけに英語圏の食文化を紹介します。
“dinner” は夕食ではなく昼食にも使われることがある
冒頭でも少し触れましたが、一般的にディナーと言えば夕食をイメージすることが多いですね。
そのため家族に「今度親戚が集まってディナーパーティーやるんだけど、集まる時間は11時で良いかな?」と言われたら「え!?そんなに早く集まって何するの?」となるはずです。
ところが英語の “dinner” は夜食べる食事以外に、お昼に食べる食事も “dinner” と呼ぶことがあるので、集合時間が11時というのもあながち突拍子な話ではありません。
いくつかの英英辞書で “dinner” の意味を調べてみました。
まずはCambridge Dictionaryから。Cambridge Dictionaryによると”dinner” は多くの日本人が想像するディナーと同じことが書かれていました。
the main meal of the day that people eat in the evening(その日のメインミールで人々は夜食べる)
Cambridge Dictionary
ところがそのほか3つの辞書では言い方は少しずつ違うものの、どれも「お昼か夜に食べる食事」と書かれています。
- the main meal of the day, eaten in the middle of the day or the evening
– Longman Dictionary- the main meal of the day, eaten either in the middle of the day or in the evening
– Oxford Learner’s Dictionaries- the main meal of the day, eaten in the evening or at midday.
– dictionary.com
その昔、その日一番ボリュームのある食事は昼食だった
なぜお昼頃に食べる食事も “dinner” と呼ばれたのでしょうか。
その起源は中世のヨーロッパにあります。当時、1日のもっとも大切な食事、ボリュームがある食事は昼食でした。その昼食を “dinner” と呼んでいたそうです。
なぜ一番大きな食事をお昼に食べていたのか。その理由は諸説あります。
まず農村社会において昼食は午後仕事を続けるための大切な栄養補給でした。そのためしっかり食事をとっていましたというもの。
その他にも、当時は今と違って「灯り、照明」が少なかったため、夕方以降は室内が暗くなってしまいます。特に日が落ちるのが早い季節はそれが顕著です。そこで明るいうちにしっかり食事をとっていたことが挙げられます。
また宗教的に夜は断食で、お昼にご飯をしっかり食べるという人たちが多かったという説もありました。
ところが照明が普及してくると夕方や夜でも食卓が明るくなったり、人々の生活や宗教との関わり方が変化した結果、16世紀から19世紀にかけて徐々にその日食べる一番大きな食事の時間は遅い時間になっていきました。
そして現代のようにその日一番ボリュームがある食事は夕食となり、”dinner” という言葉から昼間食べる食事のイメージが減り「dinner=夕食」と考える人が多くなりました。
“Sunday dinner” は日曜日の午後に食べる食事
英語には “Sunday dinner(サンデーディナー)” という言葉があります。
“Sunday dinner” とは家族や親戚、友人などが日曜日に集まって食べる食事で、ローストしたお肉や野菜、ポテトなどを食べることが多いです。食べる時間は夕方・夜に食べることもありますが、多くの場合は午後2時くらいから集まって食べ始めます。
また、近所に住む親戚や友だちが集まる場合は「デザートは私が持っていく」「サラダはこの人にお願いしよう」「お酒はまかせて」と食事や飲み物、お菓子などを持ち寄ることも多いです。
余談ですがこういった「持ち寄りのパーティー」を英語では “potluck party” と呼びます。
“Sunday dinner” を使った例文
- We always have a big roast for Sunday dinner.
私たちはいつも日曜ディナーに大きなローストを用意します - My family gathers for Sunday dinner every week.
私の家族は毎週日曜ディナーのために集まります - We prepare a special dessert for Sunday dinner.
日曜ディナーのために特別なデザートを準備します - The whole family helps to cook Sunday dinner.
家族全員、日曜ディナーの料理を手伝います
学校給食を “school dinner” と呼ぶことも
以前、ニュージーランドに住んでいたとき、娘が持っていた絵本の中で学校給食のことを “school dinner”と紹介してあり驚いたことがありました。
そのとき初めて知ったのですが、英語、特にイギリス英語圏では学校で提供される食事(給食)を “school dinner” と呼ぶことがあるんです。他にも “school lunch” や “school meal” と呼ぶこともあります。
ちなみにイギリスのBishopswood Junior Schoolという学校の “school dinner” では、メインとして「ハンバーガー」や「ピザ」「パスタ」など炭水化物と肉類、チーズが多く入った物が、そしてサイドとして「フライドポテト」「サラダ」そしてちょっとしたデザートが提供されているようです。
School dinnerを使った例文
- My kids love school dinners.
うちの子どもたちは給食が大好きです - The school dinner today is spaghetti with tomato sauce and garlic bread.
今日の給食はトマトソースのスパゲッティとガーリックブレッドです - School dinners provide students with healthy and balanced meals.
給食は子供達に健康的でバランスの取れた食事を提供しています
まとめ:とは言え “dinner” は「夕食」が一般的です
最後に誤解がないようにお伝えしておくと、”dinner” は「夕食」という意味で使うことが一般的です。
昼食という意味で “dinner” を使うと誤解を生むことがあるかもしれないので、何か意図がない限り、昼食は “lunch” と言うようにしましょう。
もし誰かが夕食以外の時間帯に食べる食事を “dinner” と言ったときに、この記事を思い出して「あ、ランチね」と思ってもらえたら幸いです。