今回は、私が日本で英語の勉強をしていた時には気付かなかった、ある単語の使い方のお話です。
例えばこんな場面を想像して下さい。
あなたは友達と海外旅行中に、駅で切符の買い方が分かりませんでした。
そこで、友達は駅員さんを呼びに行きました。
あなたが券売機のところに一人で立っていると、そばにいた親切な一人の女性が買い方を教えてくれました。ちょうどその時、友達が駅員さんを連れて戻ってきました。
そこで、友達に向かって「彼女が今、切符の買い方を教えてくれてるんだ」と英語で言うとします。
このセリフ、あなたならどんなふうに表現しますか?
“She’s showing me how to …”?
「彼女が今、切符の買い方を教えてくれているんだ」
これを英語で言うとしたら、どんな単語で文を始めますか?
「彼女が…」なので、迷わず “She” を選びませんか?
私は、こういった名前の分からない人を目の前にして「この人が」と言いたい時、女性の場合は迷わず “She” と言っていました。
でも実は、こんなシチュエーションで “she” はあんまり使わないんです。
「この方」「あの方」を英語で言うと?
上のシチュエーションのように当人が目の前にいる場合、その人の名前が分からなければ、日本語では「彼女が/彼が」とも言いますが「この方が」なんていう言い方もしますよね。
その「この方」にあたる言い方が英語にもあるんです。それが、
this lady
this gentleman
です。実は、この使い方は以前の職場でとってもよく耳にしました。
例えば、お母さんと小さな子どもがアイスクリームやお菓子を買いに来た時。
子どもが、自分の買いたいものを大事そうに私がいるレジの前まで持って来ます。そこでお母さんは子どもに向かって、こう言うんです。
- Give it to the lady.
ここで “Give it to her.” とは言わないんです。

他にも、こんなことがありました。
お客さんに「どこ出身なの?」と聞かれて「大阪だよ」と言うと「行ったことあるよ!」という話になったりして、その後でそのお客さんのパートナーが登場すると、
- This lady is from Osaka.
のように私のことをパートナーに話している、という事もよくありました。
また、同じように、名前を知らない人のことを指して「あの人」「あの方」と言う場合には、
that lady
that gentleman
と言うと丁寧な表現になります。
例えば、お店で店員さんに何かを聞いたら「〜だよ」と言われたとします。次に、別の店員さんに「あの店員さんに〜と言われたんだけど」と話をするような場合には、
- That lady/gentleman told me that …
のように “that lady/gentleman” が登場する感じです。
ちょっと長くなりましたが、何が言いたいかと言うと、
目の前にいる、名前が分からない人のことを指して「この人は」「この方は」と言うような時や「あの人」「あの方」を丁寧に言う場合には “she/he” ではなく “lady/gentleman” がよく使われる
ということです(“gentleman” は “gentle man” ではないので注意してくださいね)。
相手を目の前にして「この人」と表現する時に “This person …” と言うと、あんまり丁寧な感じではありません。
“lady” と “gentleman” の意味
そもそも、“lady” を使う表現って “Ladies and gentlemen” ぐらいしか知らなかったので、この使い方を初めて耳にした時はとても新鮮でした。
最初は「“this lady” なんて、上品に呼んでくれるなぁ」と思っていたのですが、何度も耳にする度に「何か違うぞ」と思い始めました。
辞書を引いてみると、ちゃんと載っています。
【lady】[丁寧に] ご婦人、女のかた(当人を前にして「あの方」「この方」と間接的に指して言う場合)
ジーニアス英和大辞典
「ご婦人」という意味はよく知られていますが、ポイントはカッコの中です。当人を前にして「この方」「あの方」と言うときの “this lady” や “that lady” は本当によく使われます。
名前を知っている場合は、名前で呼ぶのが基本
以前にもコラムで書いたことがありますが、日本人は会話の中では、目の前にいる相手の名前を呼ぶ習慣がありません。
花子さんにお茶を入れてもらって「ありがとう、花子さん」とはあまり言いませんよね。「ありがとう」とだけ言います。
でも、英語圏(少なくともニュージーランド)では少し違います。“Hi, John.” や “Thanks, John.” のように名前をつけて言うのは当たり前。”This lady …” と言うのも相手の名前が分からない場合のことで、名前を知っている場合は必ず名前で言います。
また、お互いが知っている人のことを話題に出す時は、例えば「ちょっと奥さんに聞いてみるね」と言うような時でも “I’ll ask my wife.” よりも、“I’ll ask Kate.” のように名前で言うことが多いです。
たまに全然知らない名前がいきなり会話に出てきて「誰のこと???」となったりもしますが、それぐらい名前で呼ぶというのは基本的な習慣です。
なので、“this lady” や “this gentleman” は他人で本当に知らない人ぐらいにしか使いませんが、目の前にいる名前が分からない人のことを指して使う “lady/gentleman”、ぜひ覚えておいて下さいね!
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