「〜できた」を英語で言おうとした時に、真っ先に思い浮かぶ単語は “could” ではないでしょうか。
「〜できる」が “can” なので、それを過去形にした「〜できた」は “could” だと思いますよね。
これは間違いではないものの、全ての「〜できた」に使えるわけではないんです。つまり「〜できた」なのに “could” が使えない場合もあるということです。
あるニュースを報じた記事から、日本人が間違えやすい「〜できた」という英語表現を取り上げてみたいと思います。
オーストラリアの駅で起きた、ある出来事
「〜できた」を英語で表現する時に “could” がいつでも使えるわけではないんだなと私が実感したニュース記事はこちらです(2014年のニュースです)↓
The West Australian『‘Andy’ in shock during train rescue』
簡単にまとめると、オーストラリアのある駅で、電車に乗り込もうとしていた男性の左足が滑って、電車と駅のホームとの隙間にスルッと落ちてしまい、太もものあたりでガッチリはまって抜けなくなってしまいました。
駅のスタッフと、その場に居合わせた多くの乗客が力を合わせて電車の側面を押し、車両を傾けて隙間が5-10cmほど広がったところで男性の足は無事に抜けました。
この出来事の一部始終を報じた動画がこちらです↓
過去形の「〜できた」は英語でどう言う?
以下の3つの文は元の記事からポイントになる部分を抜き出して簡単に訳したもので「〜できた」「〜できる」という表現が含まれています。
では、ここで問題です。これらは英語ではどう書いてあると思いますか?
- 彼らは車両をなんとか傾けることができた(傾けることに成功した)
- 彼らは電車を5-10cm動かすことができた
- スタッフは乗客たちに、できること全てをするように言った
“could” が使えるのか、使えないのかを意識してみてくださいね。
“could” が使われている「〜できた」は…
ニュースの記事で “could” が使われているのは3番だけです。
上の3つの文は、英語でこう書いてありました(実際の文を短くしています)。
- 彼らは車両をなんとか傾けることができた(傾けることに成功した)
They managed to tilt the carriage. - 彼らは電車を5-10cm動かすことができた
They were able to move the train 5-10cm. - スタッフは乗客たちに、できること全てをするように言った
The staff told passengers to do all they could.
1番は “managed to”、2番は “were able to” が使われていましたが、なぜここでは “could” が使えないのでしょうか?
過去形の「〜できた」を表す “could” の使い方をおさらいをしてみましょう。
“could”、”managed to”、”was able to” の違い
English Grammar in Useには “could”、”managed to”、”was/were able to” についてこう書かれています。
We use could for general ability. But if you want to say that somebody did something in a specific situation, use was/were able to or managed to (not could)
English Grammar in Use
つまりどういうことか簡単に言うと、
【could が使える】一般的な能力による「〜できた」
【could が使えない】ある特定の場面で「〜するのに成功した」という意味の「〜できた」
です。その人が持っている持続した能力によって「〜できた」には “could” が使えます。例えば「子供の頃は早く走れた」「昔はピアノが弾けた」「若い頃は徹夜できた」などです。
ところが、ある特定の場面や一回きりの場面で「〜することに成功した=〜できた」という結果を表す場合には “could” ではなく、”was/were able to” や “managed to” が使われます。”managed to” は「(難しかったけど)なんとかやり遂げた、成功した、できた」というニュアンスです。
English Grammar in Useにはこんな例文が載っています↓
English Grammar in Use
- Mike was an excellent tennis player when he was younger. He could beat anybody.
- Mike and Pete played tennis yesterday. Pete played very well, but Mike managed to beat him.
この違いを踏まえると、ニュース記事に載っていた3つの文も理解できると思います。もう一度見てみると、
- 彼らは車両をなんとか傾けることができた(傾けることに成功した)
They managed to tilt the carriage. - 彼らは電車を5-10cm動かすことができた
They were able to move the train 5-10cm. - スタッフは乗客たちに、できること全てをするように言った
The staff told passengers to do all they could.
1も2も「なんとか車両を傾けることができた」「電車を動かすことができた」と、ある特定の状況で何かをした結果「できた」と言っているので “managed to” や “were able to” が使われているのに対して、3は一般的な能力のことを話しているので “could” なんです。
「できた」を英語で表現する時は注意が必要
「〜できた」と言う時にはついつい “could” を使ってしまうことがよくありますが、実は “could” には上のようなルールがあります。
実際には “could” は「〜できた」よりも「〜かもしれない」という【可能性】を表す時に使われることが多いんです(以下のコラムで詳しく紹介しています)。
今まで「〜できた」を全て “could” で済ませていた人は、今回紹介した使い分けを意識して “was/were able to” と “managed to” を使ってみて下さいね。
ちなみに “couldn’t” は上で説明したルールにとらわれずに、どんな「〜できなかった」にも使えます!
■「〜できた」の “could” と “was/were able to”、「〜できなかった」の “couldn’t” の使い方は、以下のコラムに詳しくまとめているので、ぜひ合わせてご覧ください!