“empathy” という単語を耳にしたことはありますか?
ニュースやいろんな記事を読んでいて、個人的にこのところとてもよく目にする単語だなと思っています。
そこで今回は “empathy” の意味を紹介しつつ、”sympathy” との違いも取り上げたいと思います。
この2つの単語は似ているようで、実はとても大きな違いがあるんです。
“sympathy” ってどんな意味?
まずは、よく “empathy” と比べられる “sympathy” の意味をサラッと見てみましょう。
これは「同情」と訳されることが多いのですが、英英辞書には、
the feeling of being sorry for somebody; showing that you understand and care about somebody’s problems
(オックスフォード現代英英辞典)
と書かれています。辛い状況にある人や、問題を抱えている人に対してのことを「かわいそう・気の毒に思う気持ち」ですね。
例えば、自然災害で被害にあった方たちを「気の毒だな」と感じる気持ちは “sympathy” で、誰かが亡くなったときの「お悔やみ(の気持ち)」も “sympathies” で表します。
つまり、”sympathy” は相手の辛さ・苦しさを感じとり、思いやる「あなたの気持ち」です。
“empathy” の意味とは?
“empathy” は「あなたの気持ち」のことではありません。
「共感」や「感情移入」と訳されたりしますが、ちょっと分かりにくいので英英辞書を見てみると、
the ability to understand other people’s feelings and problems
(ロングマン現代英英辞典)
「人の気持ち・問題を理解する能力」と書かれています。
苦しんでいる人がいたら、その人の立場に自分の身を置いて、痛みや苦しみ・気持ちを理解したり共有できる能力が “empathy” です。
ここでちょっとポイントになるのは「自分だったら」という自分主体の目線ではなく、あくまでも相手の目線で、相手が感じていること・思っていることに心を向けて理解するということです。
先日行われた、アメリカ大統領選挙へ向けた民主党の党大会で、ミシェル・オバマさんがトランプ政権を “total and utter lack of empathy(共感能力の完全なる欠如)” と批判し、”empathy” をこんなふうに表現していました↓
Empathy: that’s something I’ve been thinking a lot about lately. The ability to walk in someone else’s shoes; the recognition that someone else’s experience has value, too. Most of us practice this without a second thought. If we see someone suffering or struggling, we don’t stand in judgment. We reach out
(CNN)
“in somebody’s shoes” は「誰かの立場になって」という意味でよく使われるフレーズですが、これが “empathy” を理解する上でとても大切です。
リーダーに求められる “empathy”
この “empathy”、政治やビジネスの世界でリーダーに求められる素質として語られることが近年特に多いように感じます。
“empathy” を持っている “empathetic” なリーダーは、上のミシェル・オバマさんの言葉にもあるように、誰かが苦しんでいたら批判するのではなく手を差し伸べる、そしてその人がどう感じているのか・考えているのか理解しようと “listen” する能力に長けているのだと思います。
そんな “empathetic” なリーダーシップで国内外から注目されているのがNZのジャシンダ・アーダーン首相です。
もともと貧困や教育・国民の健康に重点をおいた政策をとっていますが、その信念が強く表れたのが今回のコロナ対策だと思います。
国民の目線に立って不安を分かち合い、”We’re all in this together” というメッセージを発信し続けていたり、facebookライブを頻繁に行って国民からの質問にその場で答えるなどコミュニケーションは驚くほど細やかです。
国民は自分たちの不安・苦しみを分かってくれると感じる政府だからこそ、ロックダウンや厳しい政策にも団結して協力したのではないかと思いますが、これは国単位ではなく、会社や組織にも同じことが言えると思います。
不安が渦巻くこんな時代だからこそ特に、”sympathy” を見せるだけのリーダーではなく、苦しい立場の人の気持ち・問題を一緒になって理解し行動しようとするリーダーが求められるのかもしれませんね。