7月3日から新しい紙幣の発行が始まります。
テレビやネットニュースで新紙幣のデザインを目にする機会も増えてくると思いますが、その券面に赤字で書かれている “SPECIMEN” という英語が気になった方はいませんか?
今回は、この “specimen” の意味を紹介します!
紙幣に書かれた「SPECIMEN」の意味
新紙幣に限らず、紙幣(英語で banknote と言います)の画像に日本語で「見本」と書かれているのは、誰もが一度は目にしたことがあると思います。
この英語バージョンが「SPECIMEN」です。つまり、お札に書かれている「SPECIMEN」とは、
見本
という意味になります。
↓新紙幣の見本には「SPECIMEN」と「見本」の両方が書かれていますね。
ちなみに、読み方は /ˈspesɪmɪn/ なのでカタカナ読みで「スペシメン」と読むとちょっと通じにくいかもしれません。以前にも紹介しましたが、母音 /ɪ/ の発音はカタカナの「イ」と同じではなく、「イ」と「エ」の間みたいな音です。
カタカナの「イ」は口を横に引っ張って口先で音を出している感じですが、 /ɪ/ の音は口は横に引っ張らずにリラックスさせたまま喉の奥の方から出す「イ」みたいな感じです。
英語の “specimen” の意味
紙幣に “specimen” と書かれていれば、意味は「見本」なのですが、他にも、
- 標本
- 検体、検査サンプル
という意味で使われるのが “specimen” です。こちらの意味で使われることの方が多いかもしれません。
試しにグーグルで「specimen」と画像検索してみてください。紙幣の「見本」とは全然違うものが出てきましたか?
ホルマリン漬けにされた生物の「標本」や昆虫の「標本」、そして検尿の尿や採血した血などの「検体」が出てきたかと思いますが、これがまさに “specimen” です。
英英辞書で “specimen” の定義を見てみると、
Cambridge Dictionary
- something shown or examined as an example; a typical example
- a small amount of blood or urine used for testing
1が「標本」を表す “specimen” で、”insect specimens(昆虫標本)” や、ホルマリン漬けのものは “wet specimens” とも言われます。「標本」という日本語訳にとらわれがちですが、コアイメージは上の定義にもあるように “an example(例)” です。お札に書かれている「SPECIMEN」もこれですね。
そして2が検査のための「検体」を意味する “specimen” ですね。口語で使う機会はあまりないものの、”blood specimen(血液の検体)”、”urine specimen(尿の検体)” みたいに使われます。何かの一部で、それが全体がどんなものかを示しているもの、というイメージです。
![](https://kiwi-english.net/wp-content/uploads/2024/06/insect-specimens.jpg)
“specimen” という単語は、ラテン語で「見る」を意味する “specere” という単語から来ているそうです。
これを知ると、お札の「見本」や、動物・植物の「標本」、そして検査のための「検体」を表すというのが少しイメージしやすくなるかもしれません。
“specimen” と似ている “spacemen” とは
最後にちょっと余談を。
“specimen” って “spacemen” に見た目が似てませんか?私の夫はつい “spacemen” と読んでしまうそうです。
実はそんな “spacemen” というのも、ちゃんと実在する英単語です。
単数が “spaceman”、そして複数形が “spacemen” です。これってどんな意味だと思いますか?
何となく想像できたかもしれませんね。これは「宇宙飛行士」や「宇宙人」を意味する単語です。一般的に使われる単語ではないので「宇宙飛行士」は “astronaut” だけ覚えておけば大丈夫かなと思います。
“spacemen” と “specimen” とは全く別物なのでご注意を(ちなみに “specimen” は単数形です。”speciman” とは言いません)。
■コラムの中に登場した、母音 /ɪ/ の発音はこちらで詳しく紹介しています。この音がしっかり発音できると、カタカナ英語からグンと脱出できるので、ぜひあわせてご覧ください↓