“Last Christmas” は「最後のクリスマス」じゃない

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[この記事は2016年12月27日に公開されたものです]

昨日、イギリスのポップデュオ、ワム(Wham!)の元メンバーであるジョージ・マイケルさんが亡くなった、というニュースが世界に衝撃を与えました。

ワムと言えば、『Last Christmas(ラスト・クリスマス)』があまりにも有名ですよね。
リアルタイムでは知らなくても、クリスマスソングの定番として一度は耳にしたことがあると思います。

そんなマイケルさんがクリスマスに亡くなったのを受けて、インターネットでは「本当にラストクリスマスになってしまった…」というような表現をいくつも目にしました。

でも、このタイトルの『Last Christmas』は「最後のクリスマス」ではないんです。

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『Last Christmas』は「最後のクリスマス」ではない

ジョージ・マイケルさんの訃報に際して、インターネットではこんなふうな表現を目にしました。

・ワムのジョージマイケルさん死去。ラストクリスマスへ
・『ラストクリスマス』そのままに
・ラストクリスマス、まさにその通りになってしまった
・ラストクリスマスを見届けて亡くなる

「ラスト」は日本語でもよく使われていますよね。
例えば「ラストシーン」「ラストチャンス」「ラストコンサート」、あるいは「これでラスト」なんていう言い方もすると思います。

これらの「ラスト」は明らかに「最後の」という意味で使われています。

なので、この曲のタイトル『ラスト・クリスマス』を「最後のクリスマス」だと考えても不思議ではありません。

英語の “last” ってどんな意味?

ここで “last” の意味を調べてみました。
オックスフォード新英英辞典には、こんな定義が載っています。

1. coming after all others in time or order; final
2. most recent in time; latest

1は「時間・順番的に一番最後」という意味、つまり日本語で言う「ラスト」と同じですね。
2は「過去の中で一番最近の、先の、前の」という意味になります。これは「先週、先月、昨年」などに使われる “last” です。

でも、これだけだと『Last Christmas』は「最後のクリスマス」「去年のクリスマス」、どちらにも捉えられそうですよね。

ただ、ここで1つ覚えておきたいのは、1の「一番最後の」という意味で使われる場合には “the last” がつくことがとても多いということです(my/his/her/theirになることも)。
それに対して、2の「一番最近の」を表す場合は何もつかないことが多いです(例外もありますが)。

有名な『ラスト・サムライ』という映画がありますが、あれも英語のタイトルは “The Last Samurai” です。「最後のサムライ」だからですね。

他にも、ここに2つの文章があります。それぞれどんな意味になるでしょうか?

A. This is the last week of December.
B. I turned 20 last week.

Aは「12月の一番最後の週」という意味なので “the last week” のように “the” がつきます。
それに対してBは一般的な「先週」という意味で使われているので、”the” はつかないんですね。

今回は、ジョージ・マイケルさんが亡くなったことを受けて “2016 was indeed his Last Christmas” といった表現をいくつか目にしました。

『ラスト・クリスマス』の歌詞をおさらい

では、文脈で確かめてみましょう。

もしかしたら昨日、世界中で一番再生されたかもしれない『ラスト・クリスマス』の動画。最初の部分の歌詞をひろってみましょう。

Last Christmas, I gave you my heart
But the very next day, you gave it away
This year, to save me from tears
I’ll give it to someone special

“Last Christmas” に君にハートをあげたけど、すぐ次の日にどっかにやっちゃった
今年は涙を流さないように、特別な誰かにあげよう

みたいな感じですね。
まず、”the” は付いてないので「最後のクリスマス」ではなさそうです。

では、意味から考えたらどうでしょうか?
「最後のクリスマス」だとしたら、後に出てくる “this year(今年は)” との対比がおかしいですよね。もし最後だったら、今年はないはずです。

「過去の中で一番最近のクリスマス=去年のクリスマス」と考えたらしっくりきますね。
この『Last Christmas』は「去年のクリスマス」のことを指しているんです。

とは言え、日本語の「ラスト◯◯」にいちいち「ザ」を付けましょう、と言っているわけではありません。
ただ、日本語ではそれでよくても、英語では “the” があるのとないのとでは意味が変わるのは覚えておいてもいいかと思います。

“the” のある、ないで変わる意味

“the” をつけるのかつけないのかって、とても悩むところだと思います。
“the” をつけることによって1つのものに限定することができるのですが、これが分かっててもなかなか私たち日本人には難しいですよね。

実際の例を見て1つ1つ理解していくと、ちょっとは馴染みやすくなるかもしれません。

“last year” と “the last year” とでは意味が大きく変わってきます↓

また、”Do you have time?” と “Do you have the time?” にも違いがあります↓

“go to school” と “go to the school” の違いも “the” の理解に役立つと思います↓

“Christmas” と “Xmas” の違いはこちら

日本ではクリスマスのことを “Xmas” や “X’mas” と書くことも多いですよね。でも、それって正しい英語なのでしょうか?
実際のところはどうなのか、なぜ「クリスマス」が “Xmas” になるのか、こちらのコラムで紹介しています↓

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