「ダイバーシティ」と「インクルージョン」の本当の意味

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ニュージーランドで起きた2つのモスク銃撃事件から2週間が経とうとしています。

その間の今回のテロへのニュージーランド国内の反応には大きな特徴があります。それは「憎しみ、対立」ではなく「宗教・人種を超えた連帯・団結」が国じゅうで起きていることです。

亡くなられた方々がイスラム教徒である、移民である、そんなことは関係なく「同じニュージーランド国民として嘆き悲しんでいる」というのが国民の反応です。

ニュージーランドは移民も多く、難民も受け入れていて、様々な人種・民族・宗教の人が生活している「ダイバーシティ」を象徴するような国です。

ともすれば対立が生まれそうな今回のテロの後、人種・宗教を超えて国民全体がひとつになっている背景に「インクルージョン(インクルーシブ)」が挙げられるのではないかと私は感じました。

そこで今回は「ダイバーシティ」と「インクルージョン、インクルーシブ」とは何なのかを、私が感じたことを交えて書いてみたいと思います。

「ダイバーシティ(diversity)」の意味とは?

日本でも「ダイバーシティ」という言葉を耳にする機会が増えてきていると思いますが、どんなものなのかイマイチ分からない、という人も少なくないと思います。

「ダイバーシティ」は英語で書くと “diversity” で、意味は、

the fact of many different types of things or people being included in something; a range of different things or people(Cambridge Dictionary)

です。簡単に言うと、色んな違う種類の人がともに存在しているということで「多様性」と訳されることが多いです。

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“diversity” の形容詞は「ダイバース(diverse)」で、ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相の言葉を借りるなら、

  • ‘New Zealand is one of the most diverse nations in the world.’
    ニュージーランドは世界でも最も多様性のある国家の1つです
  • ‘We are a proud nation of more than 200 ethnicities, 160 languages and amongst that diversity we share common values’
    私たちは200以上の民族と160の言語から成ることを誇りにしている国で、その多様性の中で私たちは共通の価値感をもっている

となります。つまり、国や社会における “diversity” は様々な人種・民族・宗教・文化などの人々が一緒に存在している、ということになります。

では「ダイバーシティ」とよく一緒に語られる「インクルージョン」とは何なのでしょうか?

School diversity many hands held together

「インクルージョン(inclusion)」の意味とは?

「インクルージョン」、そして形容詞の「インクルーシブ(inclusive)」は日本では企業マネジメントでよく使われるようになってきた言葉ですね。

動詞の “include(〜を含む、含める)” から分かるように、名詞の “inclusion” の基本的な意味は「含んでいること」です。「包括、包含」などと訳されることが多いですが、英英辞典の定義はこうなっています。

the act of allowing many different types of people to do something and treating them fairly and equally(Cambridge Dictionary)

つまり、国や社会においては、様々な人種・民族・宗教などの人を同じように受け入れ、公平・平等に扱うこと。というのがザックリとした意味になります。

そんな状態が “inclusive” ということですね。こちらもアーダーン首相とNZの政治家の言葉を借りると、

  • ‘We see ourselves as peaceful and inclusive.’
    私たち(ニュージーランド国民)は自分たちを平和を愛するインクルーシブな人だと思っている
  • We need to create an inclusive world where no one feels excluded.
    私たちは、社会から除外されていると感じる人がいないインクルーシブな世界を創らないといけない

のように、”inclusive” は “exclusive(排他的な)” の反対にあたる言葉なんですね。ただ様々な人が存在するだけではなく、みんながその一部であり平等という意識の部分までが “inclusive” には含まれているようです。

インクルーシブな社会に必要なこと

今回のテロの後のJacinda Ardern首相の対応は国民から支持され、世界からも賞賛の声があがっています。

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それは冒頭にも少し触れたように「敵は誰だ」「白人 vs イスラム」という対立を煽るのではなく「暴力・テロ・過激主義・ヘイトはこの世界に居場所はない」こと強く訴え、「イスラム教徒/非イスラム教徒」「移民/非移民」という枠ではなく「皆が同じニュージーランド国民」という姿勢を示したことが大きいと思います。

まさに「インクルーシブな国ニュージーランド」を示したのですが、その際にたくさん使われたキーワードがこれらです↓

  • love:愛
  • compassion:苦しんでいる人に寄り添う深い同情、共感
  • tolerance:寛容さ
  • kindness:思いやり
  • respect:あるがままを認め、尊重すること
  • ‘They are us.’:彼らは私たちです(※首相のスピーチより。この “They” は犠牲者のこと)

これらはインクルーシブな社会を実現するには、どれも欠かせないものだと思います。

違いで差別・排除するのではなく、また、違いを無理に同じものに変えようとするのでもなく、それぞれの価値観を尊重して当たり前に皆が受け入れられ、生きていける社会には不可欠なものばかりです。

Outside the Al Huda Mosque, 21 Clyde St., Dunedin, New Zealand, 9.23 AM Mon. 18 March 2019

モスク襲撃事件の対応に見る「インクルージョン」の大切さ

今回のNZ首相の言葉で私が一番心に残っているのは、上にも挙げた “They are us.” です。

イスラム教徒や移民・難民を「自分たちとは違う人たち」と分けて考える人は少なくないと思います。そんな中で「イスラム教徒=私たちだ」と先頭を切って言い、実際に行動できる国のリーダーは、世界にどれだけいるでしょうか?

ニュージーランドに差別やヘイトが全くないかというと、そうではありません。

それでも、首相は「人種・宗教差別、ヘイトは絶対に許さない」という強い姿勢を世界に示し、大半のニュージーランド国民たちが持っている、上に挙げたような「インクルーシブな社会を誇りとする心」に訴えかけたことが、宗教・民族・人種を超えた団結に繋がったのだと思います。

また、言葉で訴えるだけでなく、事件直後に首相自らヒジャブ(hijab, headscarf)を身につけてムスリムコミュニティーに駆けつけて寄り添い、その後も一貫して「私たちはひとつだ」という姿勢を見せ続けています。

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今回は他にも、銃規制法改正案の素早い発表なども評価を得ていますが、私は人の心に寄り添った「私たちはひとつ」という対応が一国のリーダーとして素晴らしかったと思います。

そして、それを実際に行動で示しているニュージーランドの人たちもすごいなと思いました。

事件のあったモスクだけでなく、国内の他のモスクも市民からの献花であふれ、全国各地で開かれたvigil(犠牲者に祈りを捧げる集会)には数多くの市民が参加し、先週の追悼式典ではイスラムコミュニティーから感謝も述べられました。

テロで50人の命が奪われるという悲しい事件でしたが、首相が国民・世界に示したこと、そしてニュージーランドの人たちから「インクルーシブな社会、インクルージョン」の大切さ、そしてそれを実現するために大事なことを学んだので、今回こうして取り上げました。

長くなりましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。

「インクルージョン」の理解を深めるために

BBCによるアーダーン首相へのインタビュー。首相はニュージーランドの “inclusive nation”、そして “inclusive world” についても話しています↓

下の動画は、イスラム教徒でありオーストラリアのテレビ番組でプレゼンターを務めるWaleed AlyさんによるNZ首相へのインタビューです。

こちらは、今回のテロのもっと突っ込んだ話や、家族の話・ヒジャブを身につけた話、犯人の国籍であるオーストラリアを含めた世界のリーダーへのメッセージなど、首相自らの想いを言葉を選びながら語っています。英語字幕のみですが、とてもいいインタビューです↓

 

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■英語の “respect” と日本語の「リスペクト」はちょっと違う意味で使われています。英語の “respect” については以下のコラムで詳しく紹介しているので、ぜひご覧ください↓

■ニュージーランド国歌の歌詞からもニュージーランドという国が伺えます↓

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