以前、友達と話していた時のこと。その友達の旦那さんがしばらく家を留守にしていると言っていたので、どうしたのか聞いてみたら、
- His grandma is dying.
という答えが返ってきました。では、ここで問題です。
友人の旦那さんのおばあちゃんはこの時、もうすでに亡くなっていたのでしょうか?それともまだ亡くなっていないのでしょうか?
答えは “〜 is dying” の意味を知っていれば簡単です。
“〜 is dying” の意味とは?
まずは答え合わせから。
友人が言った “His grandma is dying.” は「彼のおばあちゃんが危篤です」という意味になります。
つまり、この時点でおばあちゃんはまだ亡くなっていません。生きています。
この “is dying” は “die” が現在進行形になった形です。”die” は「死ぬ」という意味ですよね。そして、現在進行形は「〜している」と訳すと習ったと思います。
では、なぜこれが「死んでいる」にならないのかというと、”die” というのは「生きることをストップする」という瞬間の動作を表すからです。
ここに「ストップする」という言葉が出てきましたが、この「ストップする」もある時点をピンポイントに指している言葉ですよね。動いているのが完全に止まる、その瞬間を指します。
こんな「瞬間の動作」を表す動詞は進行形にしても「〜している」という意味にはなりません。進行形は始まりと終わりがある区切られた時間の中で起こっている「〜している」だからです。「瞬間の動作」は一瞬のピンポイントのことなので、始まりから終わりまでの時間の幅がないですよね。
ではどう訳すのか。それは「〜しかけている」です。例えば、
- The train is stopping.
は「その電車は止まっている」ではなく「止まりかけている」です。つまり、まだ動いています。これと同じように考えると、
- His grandma is dying.
の意味が分かります。言葉を選ばずに言うと「死にかけている」です。なので、まだ死んでいません。
現在進行形の “〜 is dying” は「危篤の」「瀕死の」「助かる見込みがない」
では、ここでもう少し突っ込んだ質問をしてみましょう。なぜ、瞬間を表す動詞が現在進行形になると「〜しかけている」という意味になるのでしょうか?
これも進行形の使い方をきちんと理解していれば簡単です。進行形は一般的には「〜している(最中)」と訳すことが多いですが、これは終わりへ向かって物事が進み始めている・すでに動き出していることを表しています。
なので、現在進行形でピンポイントの動作を表す場合にも【もうその準備は始まっていて、その瞬間へ向けてすでに進み始めている】というニュアンスになるんです。
先ほど出てきた “The train is stopping.” を見てみると、電車は止まる瞬間へ向けて準備が始まっていて、物事が進んでいるということですね。スピードを落として今にも止まりそうな電車の姿が目に浮かびます。
同じように、”His grandma is dying.” は「死ぬ瞬間へ向けてすでに動き始めている」ということです。残念ながら、その瞬間に向けてもう動き出していて今にも現実のものとなる、そんなイメージです。
なので「人+is dying」は「危篤状態の」という意味にもなりますが、他にも「(病気が)末期の」「助かる見込みがない」も表します。それは、今日明日という時間的なことではなく、すでにそこへ向かって進んでいるというイメージを持っていれば納得ですよね。
■面白い動画を見たりして笑いながら言う “I’m dying.” の意味はこちらで紹介しています↓
“dying” は形容詞にもなる
上に出てきた “dying” は動詞 “die” の進行形でしたが、”dying” という形容詞もあるんです。例えば、
- He rushed to the hospital to see his dying grandma.
は「危篤状態のおばあちゃんに会いに病院へ急いだ」という意味になります。また、英英辞書にはこんな例文が載っていました↓
- She nursed her dying husband for months. −Cambridge Dictionary
これは「彼女は何ヶ月も旦那さんを看病した」なので、危篤というよりは「病気が末期の/助かる見込みのない」といったニュアンスかもしれません。
また、形容詞の “dying” は他にも、”dying words(最期の言葉)”、”dying wish(最期の願い)” のように「最期の、死に際の」という意味でも使われます。
これらの形容詞の “dying” も動詞で紹介したイメージと同じ、死へ向かってすでにもう動き始めていて今にもその瞬間を迎えるような状態ということです。
“be dying to/for 〜” も覚えておきたい
“dying” を使ったイディオムに、”be dying to/ for 〜” というのがあります。
これは口語で結構よく使われるカジュアルなフレーズで、実際の「死」とは関係ありません。使い方を見てみると、
- Tell me what happened. I‘m dying to know!
何があったのか教えて。知りたくてたまらないんだよ - I‘m dying for a cold beer.
冷たいビールを飲みたくてたまらない
みたいに「〜したくてたまらない、〜が欲しくてたまらない」という意味になります。本当に「死ぬ」というわけではなく、日本語の「死ぬほど〜したい」と同じような比喩表現なんですね。
口語だけではなく、ビジネスでもフレンドリーさを出すために、
- We‘re dying to hear from you!
みたいな表現を使うこともあります。これはお客さんの意見を聞きたい時に使われる表現で「ぜひご意見をお聞かせください」をちょっと大袈裟にした感じですね。
■現在進行形のニュアンスと使い方はこちらで詳しく紹介しています↓
■今回紹介した現在進行形のニュアンスを知っていると、未来の予定を表す時にも役立ちます。現在進行形で表す未来の予定についてはこちらで詳しく紹介していますので、ぜひ合わせてご覧ください↓
■「死ぬ」や「死」のダイレクトすぎない英語表現とは?
■「ガンで死ぬ」は “die from cancer”?それとも “die of cancer”?