SDGsへの関心が高まるとともに「食品ロス」「フードロス」という言葉もよく耳にするようになりましたよね。
私自身は日本に帰って来てから、スーパーで「食品ロス削減にご協力ください」や「フードロスを減らそう」と書かれたコーナーに賞味期限が迫った野菜・果物などが置かれているのをよく目にします。
では「食品ロス、フードロス」は英語で言うと “food loss” だと思いますか?実はちょっと違うんです。
「食品ロス」は英語で “food loss” ではない?
冒頭に出てきたような、スーパーや食品を扱う小売業者や消費者が「食べ物を無駄にしないようにしよう」と努力する取り組みを表すときには、英語では “food loss” という表現は使われません。その代わりに使われるのは、
food waste
という表現です。
“reduce food waste(食品ロスを削減する、減らす)” や “Zero food waste(食品ロスが無い)” のように言います。
“food waste” の意味とは?
“waste” には動詞の「無駄にする、無駄遣いする」という意味だけでなく、名詞で「無駄遣い」「廃棄物・ごみ」という意味もあります。なので、本来は食べられるはずなのに小売店や家庭で廃棄される(された)食品は “food waste” と言うんですね。
日本語では「フードロス」という言葉も使われていて、先日テレビで見たのは、いくつかのパン屋さんの売れ残り商品を集めて販売する取り組みでしたが、そこでも「フードロスを減らす取り組み」として紹介されていました。
でもこれは英語で言うと “food loss” ではなくて、”food waste” を減らす取り組みです。
小売業者が食品を廃棄しないで済むように賞味期限が迫った食品を値引きして販売したり、消費者がそれらの商品を買ったり、家にある食材を無駄にしないように上手に使い切ったり、あるいはそもそも買いすぎないように工夫したりするのは全て “food waste” を減らす方法です。
↓食品ロスを減らすために自宅でできる方法が右側に書かれています(SIX SIMPLE THINGS YOU CAN DO TO REDUCE YOUR FOOD WASTE)
↓スーパーの大手チェーンでは「zero food waste(食品廃棄ゼロ)」を目指す取り組みがされています↓
“food loss” の意味とは? “food waste” との違い
では、”food loss” は和製英語かと言うと、そうではありません。ちゃんと存在する英語です。ただ、日本語で言う「フードロス」とはちょっと意味が違うんです。
英語では “food loss” と “food waste” は別のことを指す単語で、その違いはこうです↓
Food Loss refers to food that gets spilled, spoilt or otherwise lost, or incurs reduction of quality and value during its process in the food supply chain before it reaches its final product stage. Food loss typically takes place at production, post-harvest, processing, and distribution stages in the food supply chain.
Food waste refers to food that completes the food supply chain up to a final product, of good quality and fit for consumption, but still doesn’t get consumed because it is discarded, whether or not after it is left to spoil or expire. Food waste typically (but not exclusively) takes place at retail and consumption stages in the food supply chain.
(UN Environment Programme)
“food loss” も “food waste” も、どちらもフードサプライチェーンの中で生じる食品の質や量の低下を指す、というのは同じです。ただ、その低下が「どの段階で生じるのか」で呼び方が変わるだけなんですね。
生産や収穫・加工・流通といった段階で発生すれば “food loss“、商品の姿になって卸売や小売業者・消費者まで到達したにもかかわらず廃棄されたりして消費されないものは “food waste” ということです。
ものすごく大まかに言ってしまうと、消費者が直接関わってくる小売や消費の段階で発生すると “food waste“、それより以前で発生するのが “food loss” です。
なので、上に出て来た例のスーパーやコンビニあるいは飲食店・家庭などで賞味期限切れや食べ残しで廃棄されてしまう食品は “food loss” ではなくて “food waste” なんです。
“food loss and waste” も覚えておきたい
日本語の「食品ロス」は、フードサプライチェーンのどの段階で発生するかにかかわらず「本来食べられるはずなのに廃棄されてしまう食品」という意味で使われていると思いますが、それを英語で表すときには “food loss and waste” と言います。こちらもよく使われる表現ですよ。
SDGsという言葉は皆さんよくご存じだと思いますが、その中の「Goal 12:つくる責任つかう責任(英語では Responsible consumption and production)」のデータを示したページにはこんな記載もあります↓
Food loss and waste are global problems; they happen in all countries, though food losses occur chiefly in developing countries while food waste occurs mostly in developed countries. Sub-Saharan Africa has the highest level of food insecurity, but also the highest rate of food loss.
(unstats.un.orgより)
この文章は “food loss” と “food waste” の違いをよく表していると思います。”food loss and waste” は世界的な問題で、”food loss” は主に途上国で発生していて、”food waste” の大部分は先進国で発生している、と書かれてありますね。”food loss” の割合はサハラ以南の貧困が多い地域で最も高くなっています↓
日本語で考えてしまうと、食べ物が足りなくて困っている地域でフードロスが多いってどういうこと?と疑問に思うかもしれませんが、英語の “food loss” の定義を知っていれば納得ですよね。生産・収穫過程や収穫後に流通段階させる段階でのロスが多いからです。
こんな “food loss” に対しては私たち個人ができることはほとんどないように思いますが、”food waste” に関してはたくさんあります。
例えば、安いからといって食材を買いすぎない、腐らせてしまう前に冷凍するなど工夫して使い切る、食事を残さない、外食で食べ切れないほど注文しないなんかはすぐに実行できそうですよね。
SDGsは結局なんだかよく分からないという方も、”Reduce food waste” を今日から始めてみませんか?
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