こないだ、テレビを見ていて驚いたことがありました。
あるバラエティ番組の中で、カナダの医療システムをさらっと紹介したVTRが流れたのですが「カナダでは専門医に診てもらうにはファミリードクターからの紹介状が必要」と紹介されていました。
驚いたのはそのシステム自体ではなく、その場面で大写しになった英語です。
ドクターらしき人が手に持っているのは「紹介状」だと思われます。INTRODUCTIONと書かれていますよね。
ところが、英語ではこんな「紹介状」を “introduction” とは言わないんです。
「紹介状」を英語で言うと?
テレビの画面に出てきた “INTRODUCTION” は名詞ですが、これの動詞は “introduce(紹介する)” です。
“introduce” が表す「紹介する」は「こんにちは。私の名前は○○です」のように誰かと誰かが初めて知り合うイメージです。パーティーなんかで「AさんをBさんに紹介する」や「自己紹介する」を表す時に使う動詞ですね。
■”introduce” の使い方と例文はこちらで紹介しています↓
この “introduce” の名詞にあたる “introduction” にも確かに「紹介」という意味があります。ところが、他の病院や医師に診てもらうための「紹介、紹介状」となると、
referral
referral letter
letter of referral
と言うんです。
私が住んでいたニュージーランドもカナダと同じく、まずはかかりつけ医を受診して、そこで紹介状を出してもらってから専門医に診てもらう医療システムです。妊婦検診の超音波(エコー)検査や血液検査ですら専門のクリニックで行うので、助産師からの紹介状が必要でした。
なので「紹介、紹介状」という単語は何度も耳にしていましたが、上の3つの中では “referral” が一番よく使うかなと個人的には思います。
次は “referral” のもう少し詳しい意味と使い方を見てみましょう。
“referral” の意味とは?
“referral” とは「紹介」を表す名詞です。
これだけだと “introduction” との違いがちょっとピンと来ないと思うので、英英辞書の定義も載せておくと、
referral (to somebody/something) :
Oxford Advanced Learner’s Dictionary
the act of sending somebody who needs professional help to a person or place that can provide it
です。つまり「専門家の助けを必要としている人を、それを提供できる誰かのところ(あるいはどこか)へ送ること、差し向けること」というニュアンスの「紹介」です。まさに、専門医(specialist)への「紹介」ですよね。
“referral” はこんなふうに使います↓
- You need a referral from your GP* to see a specialist.
専門医に診てもらうためにはかかりつけ医の紹介状が必要です
*GP(General Practitioner)とは「かかりつけ医、ファミリードクター」のことで、イギリス・オーストラリア・ニュージーランドなどでの呼び方です - Do you have a referral?
紹介状を持っていますか? - Do I have to have a referral to be seen?
診てもらうには紹介状が必要ですか? - You don’t need a referral.
紹介状は必要ありません - My doctor gave me a referral to a specialist.
私のかかりつけ医が専門医への紹介状を書いてくれました - Your GP will write a referral letter to the hospital.
あなたのかかりつけ医が総合病院への紹介状を書いてくれるでしょう
“referral” は「紹介」なので “need a referral” は直訳すると「紹介が必要」、”have a referral” は「紹介を持っている」、”give 〜 a referral” は「〜に紹介を与える」となりますが、実際には手紙を発行したり電子的に書類を先方に送ったりするのでニュアンス的には「紹介状が必要/紹介状を持っている/紹介状を書く」になります。
ちなみに日本でも、ビジネス関連でこれと同じ「紹介」とか「推薦」という意味で「リファラル」という言葉があるようですが、英語の “referral” の読み方は /rɪˈfɜːrəl/ なので「リファーラル」の方が近いです。
動詞の “refer” で表す「紹介する」
「紹介状を書いてもらう」を英語で言おうとすると「紹介状」という意味の英単語が知りたくなると思うのですが、実は「紹介してもらう」というふうに表現することもめちゃくちゃ多いです。
これには動詞の “refer” を使います(この名詞が “referral”です)。意味は、
to send (someone or something) to a particular person or place for treatment, help, advice, etc.
The Britannica Dictionary
なので、上に出てきた “referral” が動詞になっただけですね。
「refer (A) to B」という形で「(Aを)Bに紹介する」「Bを紹介する」みたいに使うことが多いです。これも「差し向ける」のニュアンスなのを忘れないでくださいね。
- Could you refer me to a specialist?
専門医を紹介してもらえますか?
(専門医に紹介状を書いてもらえますか?) - My doctor referred me to a specialist.
私のかかりつけ医が専門医を紹介してくれました
(かかりつけ医が専門医に紹介状を書いてくれました)
“a specialist” の部分をもっと具体的に “a heart specialist(心臓の専門医)” や “eye specialist(目の専門医)” のように表現したり「○○医」を表す単語を入れることもできます↓
- My doctor referred me to a gynaecologist/dermatologist/physiotherapist.
私のかかりつけ医は婦人科医/皮膚科医/理学療法士を紹介してくれました
(かかりつけ医が婦人科医/皮膚科医/理学療法士に紹介状を書いてくれました)
「○○医」の英語表現は専門用語になるので、必要があれば調べたり覚えるぐらいでいいと思います。他にも、
- Do I need to be referred by my GP?
かかりつけ医からの紹介(状)が必要ですか? - You will need to be referred by your GP.
かかりつけ医からの紹介が必要になります
なんかも海外の病院を受診する際には役立つかもしれません。
ビジネスで「紹介を受ける」「〜さんの紹介で」にも使える
この “refer” で表す「紹介する」はビジネスで「〜さんから紹介を受けました」を表す時にも使われます。例えば、
- Mr○○ referred me to you.
○○さんがあなたを紹介してくれました
(直訳は「○○さんが私をあなたに紹介した」) - I was referred to you by Ms○○.
○○さんから紹介を受けました
これも、単に人が知り合う「紹介する」ではなく、助けやアドバイスを求めて「(ある特定の人・会社のところへ)送る、差し向ける」のニュアンスです。
“refer” には別の使い方もあるので、それはまた今度紹介したいと思います。今回はひとまず、病院やビジネス関連の「紹介(状)」「紹介する」を表す “referral” と “refer” のお話でした。”introduce” と間違えることが多いので、ぜひ “refer” という単語は覚えておきたいですね!