今回は、いつものコラムとはちょっと違って、私がニュージーランドで現地の人たちが話すのを聞いていて思ったことを書いてみようと思います。
文法の話やスグに役立つ英語表現の話ではないので『お、どれどれ聞いてやろう』という方は、ぜひお付き合いいただければと思います。
今回のテーマは【英語と日本語の違い】です。
日本で英語を勉強している時には気付きませんでしたが、ニュージーランドに来てからネイティブが話しているのを聞くうちに、ある面白い発見をしました。
それは “for me” や “for you” をとってもよく使うということです。
英語でよく耳にする “for me” と “for you”
私はニュージーランドに来る前に日本で英会話教室に通っていたのですが、いざニュージーランドに来てみると、ちょっとしたショックを受けました。
それは、現地の人が言っている事がほとんど聞き取れなかったからです。
現地の人たちは話すスピードが速すぎて何を言っているのか分かりません。聞き取れないから、何か質問されても全然答えられません。
そこで、とりあえず現地の人たちが何と言っているのか、相手が使っている表現を盗んで自分も使おう、と一語一句聞き逃さないように、ひたすら全身を耳にしていました。
そんなことを続けているうちに見つけた、いろんな面白い発見の一つが “for me” と “for you” の使い方なんです。
例えば、こんな “for me” の使い方
“for me” と言っても “This T-shirt is too big for me” のような “for me” ではありません。例えば、こういうことです。
以前「英語が聞き取れなかった時に聞き返すフレーズ」というコラムで、電話で相手の名前が聞き取れなかった場合にスペルをたずねる “Could you spell your name?” というフレーズを紹介しました。
自分が言われる側だとすると、”Could you spell that?” と言われることもありますが、
- Could you spell that for me?
と言われることも多いんです。
また、ホテルのフロントでも “for me” に出会うことがあります。
チェックインの時に「この用紙に記入して下さい」と言われて紙を渡されることがありますよね。それを英語で言うと、あなたならどんな文章を思い浮かべますか?
“Could you fill in/out this form?” などではないでしょうか?でも、こんな場面でも、
- Could you fill in/out this form for me?
と言われたりするんです。
また、日本語でよく言う「〜さんによろしくお伝えください」なんていうのも、
- Please say hello to 〜 for me.
のように “for me” がくっついてきます。
さらに、病院ではお医者さんが聴診器を当てながら、
- Take a deep breath for me.
と言ったときには「おっ!ここでも言う?」と思わず言いそうになりました(笑)
日常生活に登場する “for you”
“for me” だけではなく “for you” もいろんなところで耳にします。
例えば、お店で商品の値段が分からず、店員さんに聞いた時には、
- I’ll check it for you.
と言われます。
カフェでも、お店に入ったら「とりあえず座って。メニュー持って行くから」と言われることがあります。
この日本語を直訳すると、”Take a seat. I’ll bring the menu.” なんかを思い浮かべますが、やっぱりここにも “for you” が出てきて、
- Take a seat. I’ll bring the menu for you.
と言われることもすごく多いんです。
「〜してくれる?」と「〜してあげる」
ここで言いたいのは、なぜ “for me” や “for you” を付けるかの文法の話ではありません。
私はここに単純に日本語と英語との違いを感じました。
上に出てきた文章では、敢えて “for me” や “for you” を言わなくても言いたいことは通じます。
なので、上に出てきたような場面で、敢えて “for me” や “for you” を使った英文を思い付く人は少ないのではないでしょうか。
なぜなら、”for me” や “for you” を「私/あなたのために」と日本語にすると変になってしまうからです。
「私のためにスペルを教えていただけますか?」
「私のために大きく息を吸って下さい」
「あなたのために調べましょう」
「あなたのためにメニューを持っていきましょう」
とは言わないですよね。でも、日本語ではこういった場面で「〜してくれる?」「〜してあげる」と表現しますよね。
“for me” や “for you” の直訳が「〜してくれる?」「〜してあげる」と教わった記憶はありませんが、ネイティブの話す英語を聞いていると、そんな時によく使っていると発見しました。
だから相手が目の前にいる時に “for me/you” とわざわざ言ってもおかしくないんです。「あなたのために」とわざわざ恩着せがましく言っているわけではないんです。
“for me”、”for you” を使う意味
「だから皆さん使った方が良いですよ!」と言うつもりはありませんが、英語にはこんな表現があると知っておくのは大切かもしれません。
私も実際に、店員さんに “I’ll check it for you.” と言われた時は「”for you” って何だか恩着せがましいなぁ」と思ってしまいました。
でも、今考えてみれば「あなたのために」と恩着せがましく言っているのではなくて、英語ではわりと普通のことなんです。
英語で文章を考える時は、ついつい日本語から考えてしまいがちですよね。でも、こんな英語を直訳するだけではない表現は、いくら日本語で考えても出てきません。
そのためにも、できるだけたくさんの「実際に使われている英語」に触れる機会を作りましょう。
そうすると、今まで見えなかったいろんな新しい発見がたくさん出てくるはずです!
■”for you” については、こちらのコラムでも触れています↓