“must” も “have to” も、それぞれの意味は皆さんご存じだと思います。
ところが、実際に自分で使うとなるとどっちを使ったらいいか分からない…とお悩みの方もたくさんいるのではないでしょうか?
また、”have to” よりも “must” の方が意味が強いとも聞いたことがありますが、それって本当なのでしょうか?
今回はそれぞれが持つ意味、ニュアンスの違いをできるだけ分かりやすく解説します。これを読めば、”must” と “have to” の違いがスッキリするはずです!
“must” と “have to” の意味は「〜しなければならない」
“must” も “have to” も「〜しなければならない」という意味だと習いましたよね。
- I must go to the doctor.
- You have to study hard.
はどちらも「〜しなければならない」と訳されます。私の記憶では、英語の穴埋め問題のテストで、
I have to study hard.= I ( ) study hard.
のような問題があって、正解が “must” だったような気もします。
でも、”I have to study hard.” と “I must study hard.” は全く同じ意味ではありません。その違いを生み出す “must” と “have to” の違いを見てみましょう。
“must” と “have to” の違い
まずは、”must” と “have to” の違いをザックリとまとめてみました。
細かなニュアンスは後ほど紹介するので、ここでは、こんな違いがあるんだと大まかに捉えてもらえれば大丈夫です!
【must】
〈主語が I の時〉話し手の強い考え・感情・確信が込められた主観的な「〜しないといけない」* have to も可
〈主語が You など〉強い指示や規則・ルールを表す「〜しないといけない」
〈主語が You など〉強い勧誘を表す「〜しないとだめ」
【have to】
外部的な要因があって義務的に「〜しないといけない」**口語では must より断然こちらが多い
と、だいたいこんな感じです。
“must” と “have to” の違いを詳しく解説
英語で似た表現のニュアンスの違いを知りたい場合には、英語で解説されているものを読むと「そういうことか!」と違いが分かりやすいです。
この “must” と “have to” の違いも、日刊英語ライフがいつもオススメするEnglish Grammar in Useにちゃんと載っているので、引用しながら違いを見ていきたいと思います。
“have to” の意味とニュアンス、例文
まずは【have to】がどう定義されているのか見てみましょう。
I have to do something=It is necessary to do it, I am obliged to do it
English Grammar in Use
です。”I am obliged” なので、何か外部的な要因があって義務的に「〜せざるを得ない」のニュアンスの「〜しなくてはいけない」が “have to” です。
- I have to work tomorrow.
明日は働かなくてはいけない - I have to go grocery shopping today.
今日はスーパーに買い物に行かなくてはいけない
これらは単に「明日は仕事」「買い物に行かなくてはいけない」という事実を表しています。
“must” の意味とニュアンス、例文
それに対して【must】はこうです。
You can use must to give your own opinion (for example, to say what you think is necessary, or to recommend someone to do something). Have to is also possible.
English Grammar in Use
「〜しなくてはいけない」と思う話し手の主観的な意見・考えを表すのが “must” です。
- I must talk to you.
あなたと話をしないといけない(あなたに話があります) - I must get some sleep.
私はちょっと寝ないといけない - I must go to the bank to get some cash out.
お金を引き出しに銀行に行かないといけない
これらはどれも「〜しなくちゃ」と話し手が強く確信しているニュアンスを表しています。
そして、ここで注意が必要なのは、上の定義にあった最後の一文です。この場合には “have to” も使えるんですね。「強く思っている」というニュアンスを特に強調しない場合には、”have to” の方がよく使われます。
“must” が使えない場合
さらに、English Grammar in Useには、こうも書いてあります。
We use have to (not must) to say what someone is obliged to do. The speaker is not giving his/her own opinion.
English Grammar in Use
これはどういうことかと言うと、主語が “I” 以外の「(他の誰かが義務的に)〜しなければならない」を表す場合は “have to” しか使えないということです。例えば、
- Susan can’t meet us tomorrow. She has to work.
スーザンは仕事しないといけないから明日は来れないんだって
の “has to” は話し手の意見ではないので、”must” は使えません。
- Susan can’t meet us tomorrow. She must work.
上で紹介した “must” は話し手の強い意見を表す、というポイントを押さえていれば何も難しくはないですが、日本語訳だけで暗記していると間違えやすいポイントです。
何となくニュアンスは掴めましたか?
では、”must” の出番ってあまりなさそうな気がしませんか?そこで次は、”must” がよく使われるのはどんな場合か見てみましょう!
“must” が使われる場面と使い方
実は、”must” はかたい文章や演説なんかで使われたり、強い指示や規則・ルールを表す場合によく使われるんです。例えば、
- You must print your name.
名前を(筆記体ではなく)活字体で書きなさい - You must wear a helmet if you’re travelling on a motorcycle.
バイクに乗る時はヘルメットを着用しなければならない - You must speak fluent English.
(求人の募集要項で)流暢な英語を話せないといけない
のような感じです。また、私がよく見ていた料理コンペティションの番組で、出場者が作る料理の「お題」を審査員が発表する時には、
- It must be delicious.
美味しいものでなければいけない - You must use at least one ingredient in the box.
箱の中の材料を最低1つは使わなくてはいけません
のように、こんな場面でも “must” がよく使われます。なので “must” は主語が “I” ではなくなると、強い命令に似たニュアンスを持つことがあるんですね。これがもしかしたら “have to” より “must” の方が意味が強いと言われたりする理由かもしれません。
“must” は「強いおすすめ」も表す
さらに、”must” は強い勧誘・おすすめを表す時にも使われます。
“should” の「〜したほうがいいよ」よりも断然強い意志を感じる「絶対に〜してね/しよう」といったニュアンスです。
- I had a baby last month. You must come see us.
先月赤ちゃんが生まれたんだ。絶対に遊びに来てね。 - We must catch up soon!
絶対に近いうちに会って話さないとね!
日本語には「マストアイテム」なんていう言葉がありますが、これは英語で “must-have item” と言います。絶対に持っておくべきという強いオススメが “must” から感じられますよね。
“must” と “have to” の違いまとめ
ちょっと長くなってしまったので、もう一度最後にまとめてみましょう。
【must】
〈主語が I の時〉話し手の強い意見・感情が込められた主観的な「〜しないといけない」* have to も可
〈主語が You など〉強い指示や規則・ルールを表す「〜しないといけない」
〈主語が You など〉強い勧誘を表す「〜しないとだめ」
【have to】
外部的な要因があって義務的に「〜しないといけない」**口語では must より断然こちらが多い
日常の会話の中で “have to” と “must” どちらでも使えるシチュエーションでは、”have to” の方が圧倒的によく使われています。
これは、”must” は自分が「こうだ」と強く確信しているニュアンスなのに対して、”have to” を使うことによって、外的な要因で「(本当はそうしたくないけど)やむを得ずしなきゃいけない」という柔らかさを出すことができるという理由もあるようです。例えば、
- I have to go.
もう行かなくちゃ - Sorry, but I have to look after the kids tomorrow.
ごめん、明日は子どもの面倒見なくちゃいけないんだ
みたいな感じですね。
また、”You” を主語にして “must” を使ってしまうと、命令のニュアンスが出てとても強い表現になってしまうので少し注意が必要です。
ただ、繰り返しになりますが、”have to” も “must” も両方使える場面では、どちらか一方だけが正解ということはないので、それほど神経質にならなくても大丈夫ですよ。
いろいろな違い、分かりますか?
今回登場したEnglish Grammar in Useは言わずと知れた定番参考書ですが、やっぱり他のどの英文法書よりも分かりやすいです。英語で解説してあるからこそ日本語を挟まず、スッと頭に入ってくる感覚があるので絶対におすすめです。
■今回の “must” と “have to” の違いのように、様々な【違い】を取り上げたコラム一覧はこちらからご覧いただけます。興味のあるものがあれば、ぜひご覧ください!