「もったいない」という言葉、どんな時に使いますか?
「ご飯を残すなんてもったいないよ」
「水を出しっぱなしにして、もったいないよ」
「時間がもったいない」
「盛り付けがキレイすぎて食べるのがもったいない」
「私にはもったいないぐらいの人だ」
「もったいない」とひとくちに言っても、いろんな意味で使われますよね。
「もったいない」は英語で言うと、ピッタリ表せる言葉がない、というようなことを聞いたこともありますが、それって本当なのでしょうか?
そもそも「もったいない」の意味とは?
「もったいない」を辞書で引いてみると、こんなふうに書いてありました↓
有用なのにそのままにしておいたり、むだにしてしまったりするのが惜しい。身に過ぎておそれ多い。
デジタル大辞泉
今から20年ほど前にケニアの環境保護活動家ワンガリ・マータイさんが “Mottainai” を世界に広めようと活動していたのを覚えてる方もいらっしゃると思います。
「もったいない」は、自然に対する敬意やリスペクトが込められた素晴らしい言葉だとマータイさんは大絶賛しました。
でも、それって「もったいない」という概念が世界には無かったということでしょうか?
「もったいない」は英語で表せる?
Wikipediaを見てみると、”Mottainai” という英語で書かれた項目があります。そこにはこんなふうに書いてあります↓
Mottainai is a Japanese phrase conveying a sense of regret over waste, or to state that one does not deserve something because it is too good.
Wikipedia
“waste” に関しての後悔の念のようなものを表すことばと書かれていますね。
確かに「ご飯を残すのはもったいない」「水を出しっぱなしにしてもったいない」というのは「無駄にしてはいけない」という意味が込められています。
私がニュージーランドに住んでいた時には、日本に詳しい人以外で “mottainai” を使っていた人はいませんでしたが、食べ物や水を無駄にしてはいけないという意識を持っている人はとても多かったです。また、世界的にも「食品ロス」が問題になっていることからも、人々は無駄にしてはいけないと感じているはずです。
そんな人たちが「無駄にしないで」と表現する時には、やはりWikipediaにあるように、
waste
という単語を使うことが多いです。
「もったいない」は英語なんて言う?
“waste” には動詞と名詞があって、英英辞書ではこんなふうに定義されています↓
[verb] to use too much of something or use something badly when there is a limited amount of it
[noun] an unnecessary or wrong use of money, substances, time,energy, abilities, etc.
Cambridge Dictionary
簡単に言ってしまうと「無駄にする(無駄に使う)」と「無駄遣い、浪費」ということです。英語では「貴重なものを無駄に使っている」というニュアンスで「もったいない」を “waste” を使って表すんですね。
例えば、食べ物が大量に捨てられているのを見たり、食べ残しがたくさん出てしまったときには、
- What a waste.
なんてもったいない - Wow, that’s a lot of food… What a waste.
(食べ残しを見て)いっぱいあるね…何てもったいない
のように言ったり、上にちらっと出てきた「食品ロス」も英語では “food waste” と表現します。そして、水などを必要以上に使っているときにも、
- Don’t waste water.
- You‘re wasting water.
などと「(もったいないから)水を無駄にしないで」と注意されたりします。
また、”waste” は食べ物や水だけでなく、お金や時間の「無駄(遣い)」を表すときにも使います。
例えば、つまらない映画を見た後には、
- That was a waste of time.
時間の無駄だった(時間がもったいなかった) - What a complete waste of time!
まったくの時間の無駄だわ!(時間がもったいない) - What a waste of time and money!
なんて時間とお金の無駄なの!(時間とお金がもったいない)
のように言ったりします。
では、日本語の「もったいない」と英語の “waste” を使った表現は、完全に同じ意味なのでしょうか?
「もったいない」は英語で “waste”?
ここからは私の個人的な意見なので、間違っているかもしれません。
ニュージーランドの人が “What a waste!” と言っている場面を見ていて私は「もったいない」と全く同じではないような気がしていました。
例えば日本語では、食事を残すのは「もったいない」から残さない、まだ使えるものは「もったいない」から捨てない、という言い方をしますが、この「もったいない」は、捨てることに「申し訳ない」という気持ちが強く込められていて、気持ちを表す言葉にもなっていると思います。
でも、英語で “What a waste!” や “You’re wasting water.” と言うときには、気持ちの部分よりも「貴重なものを無駄にしている」という事実を言っているのであって、「申し訳ない」という感情的なものとは少し違うような気がします。
ワンガリ・マータイさんもその辺りのことに気付いて “Mottaiani” は素晴らしい考えだと言っていたのかもしれません。
「もったいない」に限らず、日本語を英語に直訳するのが難しいのはそういったことも影響してくるのだと思います。でも、違う文化・習慣を持った人たちが、違う感じ方に合った言葉を使っているのは不思議ではないですよね。
“too 〜” で表す「もったいない」
ちなみに、盛り付けや見た目が美しすぎる料理を「食べるのがもったいない」と表現するときの「もったいない」もありますよね。
それは「無駄(遣い)」というニュアンスではないので、”waste” は使いません。
- It’s too beautiful to eat.
のように言うとしっくりくると思います。
また、「花子ちゃんは彼にはもったいないぐらいの人だ」のような「もったいない」は、
- Hanako is too good for him.
のように、これも “too” を使って表現できますよ。
“a shame” を使った「もったいない」の英語表現
ゴミ問題が環境保護が世界でも注目されるようになってきた中で、自分でいろんな英語のウェブサイトなどを読んだりしいたところ、別の「もったいない」の英語表現に出会いました。それが、
a shame
を使った表現です。例を挙げてみると、
- It seems a shame to throw this away. This still has a lot of life left in it.
これを捨てるのはもったいないわ。まだまだ使えるし。
のような表現です。この “a shame” は「残念」や「がっかりした」というニュアンスですが、気持ちの面にスポットが当たっているあたりが、日本語の「もったいない」に少し近いような気がします。他にも、
- It’s a shame to let all this food go to waste.
この食べ物を全部無駄にするのは残念だな
も食べ物を無駄にすることに対して「残念」だったり「がっかり」という気持ちを表しています。また、何かをすること・しないことが「もったいない」を表す場合にも、
- It would be a shame not to visit it during your stay in Tokyo.
東京滞在の間にそこに行かないなんてもったいないよ
のように言うことができます。さらに、上に出てきた、美しすぎて食べるのがもったいないような場合にも、
- So beautiful! It seems a shame to eat it.
美しすぎて食べるのがもったいない
のように言えますよ。日本語の「もったいない」に完全にピッタリなのかと言われると、そうではないような感じもありますが、ニュアンスは十分伝わるのではないかと思います。
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