タイトルに【接頭辞】というちょっとややこしい言葉が出てきましたね。
例えば、”incorrect”、”inappropriate”、”insensitive” といった単語がありますが、どれも “in-” で始まっています。この “in-” が接頭辞で、後ろにくる単語の意味を否定しています。
でも、同じような働きで “impossible” のように “im-” がつくこともありますよね。
今回はこういった【否定の接頭辞】の “in-” と “im-” の違い、さらに同じく否定の接頭辞 “il-” と “ir-” との違いも紹介します!
否定の接頭辞 “in-” の意味とは?
接頭辞(英語では prefix と言います)とは “in-” や “im-” のように単語の頭にくっついて、単語の意味を変えてしまって新しい意味を作るものです。
例えば冒頭に出てきた単語たちは、
- in-+correct(正確な)→ incorrect(不正確な)
- in-+appropriate(適切な)→ inappropriate(不適切な)
- in-+sensitive(敏感な)→ insensitive(鈍感な、無神経な)
という構成になっています。他にも、
- in-+formal(正式の、公式の)→ informal(非公式の)
- in-+complete(完全な)→ incomplete(不完全な)
- in-+tolerant(寛容な)→ intolerant(不寛容な)
- in-+valid(有効な)→ invalid(無効な)
- in-+expensive(高価な)→ inexpensive(高価でない)
のように、単語の前に “in-” がくっついて「不〜」や「無〜」「非〜」という意味を作るものもあります。「〜を欠いた」「〜が無い」「〜でない」ということですね。
では、冒頭に出てきた “impossible” の話に戻ります。”impossible” も「不可能」なので、
- in-+possible → inpossible
になってもおかしくないのに、なぜ “impossible” なのでしょうか?
接頭辞 “in-” と “im-” の違い
“inpossible” ではなくて “impossible” になるのは、あるルールが関係しています。それは、
「p、b、m」で始まる単語の前に “in-” がつく場合には “im-” に変化する
です。なぜこんなルールがあるのかというと、理由は簡単です。発音です。
「p、b、m」を発音するときは上と下の唇がくっつきますよね。でも、”in-” は唇を閉じない音 /ɪn-/ なんです。なので「inp、inb、inm」って言いにくいんですね。
そこで発音しやすいように、唇を閉じて発音する “im-” の音に変化したということです。
これは「ん」のローマ字表記は “n” か “m” かのコラムでも紹介した “Shimbashi(新橋)” と “Shinjuku(新宿)” の違いと同じです。
“impossible” は “im-” を取ると “possible” なので、”p” で始まっています。なので “impossible” なんですね。他にも、
- im-+mature(成熟した)→ immature(未熟な)
- im-+patient(辛抱強い)→ impatient(我慢できない、イライラした)
- im-+perfect(完璧な、完全な)→ imperfect(不完全な)
- im-+polite(礼儀正しい)→ impolite(無礼な)
などがあります。
否定の接頭辞 “ir-” と “il-“
“in-” や “im-” と同じように、単語の頭にくっつくと否定の意味を作る接頭辞は他にも、
- ir-
- il-
があります。これらも “in-” と同じ意味なのですが、発音の影響で “ir-、il-” になっているんです。
では、どんな場合に “ir-、il-” が使われるのか。それにはこんなルールがあるんです↓
ir-:後ろが “r” で始まる場合
il-:後ろが “l” で始まる場合
例えばどんなものがあるかと言うと、
- ir-+regular(規則正しい)→ irregular(不規則な)
- ir-+responsible(責任のある)→ irresponsible(無責任な)
- ir-+relevant(関連がある)→ irrelevant(無関係の)
- il-+legal(合法的な)→ illegal(非合法の)
- il-+logical(筋の通った)→ illogical(筋の通らない)
みたいな感じですね。これはどれも “in-” が音の影響で変化しただけなんです。
少しだけ注意が必要
今回紹介した【後ろが「b、p、m」で始まる場合は “im-” に変化する】というルール、ちょっと勘違いしがちなので注意が必要です。
上でも紹介した “impatient(イライラした)” という単語があります。でも実は、”inpatient” という単語も存在するんです(発音は /ˈɪn.peɪ.ʃənt/)。
“impatient” の”im-” は否定の接頭辞ですが、”inpatient” の “in” は違います。”inpatient” で「入院患者」という意味なんです(反対語は outpatient:外来患者)。
なので、何でもかんでも【後ろが「b、p、m」で始まる場合は “in-” が “im-” に変化する】というわけではなく、「無〜」「不〜」「非〜」といった否定の意味を作る接頭辞 “in-” の場合のルールだということをぜひ覚えておいてくださいね。
■日本語の「ん」をローマ字で表す場合の “n” と “m” の違いはこちらで紹介しています↓