「ニックネーム」って日本語でも使う言葉ですよね。
でも、そもそも「ニックネーム(nickname)」って何なのでしょうか?なぜ「ニック」なのか気になったことはありませんか?
今回は “nickname” という言葉の由来と、英語の “nickname” と日本語の「あだ名」の違い、そしてファーストネームにまつわる小話を紹介します!
“nickname” の由来とは
「ニックネーム」って、なぜ「ニック」なのでしょうか?ニックという人の名前みたいですが、実はニックさんは関係ないんです。
Merriam-Webster Dictionaryによると、”nickname” の語源は中世後期に使われていた【ekename】なのだそうです。 “eke” とは、”also” とか “in addition” という意味で、正式ではない名前のことを表していたということです。
そして【an ekename】の区切り方を間違えて【a nekename】になり、時代とともに音はそのまま残って【a nickname】になったということです。
なぜこんなことになってしまったのかはよく分かりませんが、区切りを間違えた結果生まれたと言われている単語は他にもあります。
代表的なものは「エプロン」です。この “apron” は本来【napron】だったのが【a napron → an apron】と区切る位置を間違えて【apron】という単語ができたんだそうですよ。
ちなみにこの “apron” の発音は/ˈeɪprən/ です。「エプロン」では通じないので注意してくださいね。
英語の “nickname” の意味とは
では、英語の “nickname” ってどんな意味か知っていますか?
「そんなの知ってるよ。’あだ名’ でしょ」と言う人もいると思います。そこで英英辞書で意味を確認してみると、
an informal name for someone or something, especially a name that you are called by your friends or family, usually based on your real name or your character
(Cambridge Dictionary)
と書いてあります。実は “nickname” には大きく分けて2種類あるんです。それは、
- ファーストネーム由来の愛称
- 名前とは関係ないあだ名
です。1は例えば「Thomas → Tom」や「Elizabeth → Beth、Liz」というように実際の名前を短くしたものがこれにあたります。もしくは、ファーストネームとミドルネームの頭文字をとって “AJ” みたいな愛称もあります。
そして、2は名前からではなく、その人の見た目の特徴や性格などから来るあだ名です。例えば、だいぶ古いですが、映画『グーニーズ』に登場するぽっちゃりした子供は “Chunk(大きな塊)”、発明家の子は “Data” というあだ名でしたね。
ところが、ニュージーランドに来て気付いたのですが、1の使い方、つまりファーストネーム由来の愛称のことを “nickname” と言うことはほとんどありません。
名前の短縮形の愛称は “nickname”?
例えば、Tomという愛称のThomasさんがいたとします。
Tomは上の辞書の定義から言うと確かに “nickname” ですが、実際には “name” と表すことの方が多いです。
と言うのも、自分の名前の短縮形を日常的に使っている人は、法的に正式な名前を求められる場面以外では “My name is Tom” というスタンスなんです。
実際に私の友人・知人も短縮形の名前しか知らない人ばかりです。自己紹介するときも “Hi, I’m Tom.” のように自分の愛称で言うし、日常生活で正式な本名を使わなければいけない場面ってほとんどありません。
それぐらい名前由来の愛称は「名前」という認識が一般的で、日本人がイメージする「あだ名」とは使い方が全く違います。
以前、娘の小学校の入学願書を記入したときにも、”First Name” の他に “Preferred Name” を記入する欄がありました。普段使っている愛称はここに記入するのですが「名前」として扱われています。
他にも、誰もが知っているビル・ゲイツの “Bill” もファーストネーム由来の愛称ですが「名前」として通用していますよね。ちなみに正式な名前はWilliam(ウィリアム)です。
また、ビル・クリントン元アメリカ大統領も本名はWilliamで、トニー・ブレア元イギリス首相の本名はAnthonyです。
ファーストネーム由来の「愛称」は辞書的には “nickname” でありながらも実際には「名前」として通用していて、日本語で言う「あだ名」とは違います。
ファーストネーム由来の愛称
最後に少し、私がニュージーランドに来て気付いた、愛称にまつわる話を紹介したいと思います。
ファーストネームを短縮した愛称にもいろいろありますが、メジャーなところとしては先ほどのThomas→Tomや、
- Robert→Bob
- Samuel→Sam
- Benjamin→Ben
- Katherine→Kate
などがありますよね。愛称から元の名前が想像できる場合も多いですが「えっ?」とビックリしたものもあるんです。
愛称だけで性別は分からない
“Sam” と言えば、上に出てきたように “Samuel” という男性の名前の愛称としてよく使われています。
でも実は、女性にも “Sam” という愛称があるんです。私はこのことを知らなくて、女性のSamさんに初めて会ったときにビックリしました。
Samは “Samantha” の愛称でもあるので「Sam=男性」と決めつけてはいけません。
これと同じように、”Charlie” も男性の愛称だと思いがちですが、女性の “Charlie” さんもいます。”Charlie” は “Charles” だけではなく、”Charlotte” の愛称でもあるんです。
そして、”Alex” も “Alexsander” と “Alexandra” のどちらも “Alex” になり得たり、”Chris” も “Christopher” と “Christina” などいろんな可能性があるので、愛称を見ただけでは性別は分かりません。
他にも、私の全くの無知から来た話で恥ずかしいのですが、ニュージーランドの語学学校の担当者Kimさんと入学前にメールをやりとりしていて、私はてっきり韓国の方だと思っていたら、実際に会ってみると全然違ったということもありました。
“Kim” は “Kimberly” さんの愛称です。アメリカの有名セレブKim Kardashianさんも本当の名前はKimberlyです。
話がちょっと逸れてきましたが、海外の人の正式な名前と愛称の使い方って、慣れていないと日本人にはイメージしにくいかもしれません。
どちらで呼べばいいのか分からない場合は、相手が自己紹介で言ったほうを使いましょう。”I’m Thomas” と言われた場合に、勝手に “Tom” と呼ぶのは失礼になってしまうので注意してくださいね。
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