“I’m wearing.” 最近話題になったフレーズですよね。
とにかく明るい安村さんがイギリスのTVショー『Britain’s Got Talent』に出場し、持ちネタの「安心してください、はいてますよ」を披露したところ、会場は爆笑の渦に包まれました。
彼が言い放った “Don’t worry. I’m wearing.”
これを聞いて「あれ?”wear” って進行形にできないんじゃなかったっけ?」と思った方はいませんか?
“wear” は進行形にできない?
今回の安村さんのニュースに付いていたコメントを見ると「”wear” は進行形にできないって学校で習った」と書いている人が何人かいました。皆さんもそんな記憶はありますか?
また、私が過去に投稿したコラムの中で “She was wearing a black T-shirt.” のような例文を書いたところ、読者の方から同じように「”wear” は状態動詞だから進行形にならないはずでは」という指摘をいただいたこともありました。
なぜか【”wear” は進行形にできない】という説があるようですが、そんなことはありません。
“wear” は進行形にできます。
でもちょっとややこしいのが、進行形にしない “wear” もあるんです。そこで今回は進行形にする “wear” と進行形にしない “wear” の違いを整理してみたいと思います。
進行形の “be wearing” と現在形の “wear”
英英辞書を引いてみると、こんな2つの例文が載っています↓
Cambridge Dictionary
- Tracey is wearing a simple black dress.
- He wears glasses for reading.
それぞれを訳してみると、例文1は「トレーシーはシンプルな黒のワンピースを着ている」で、例文2は「彼は読書をする時に眼鏡をかけている」です(”wear” は服に限らず、眼鏡・時計・アクセサリーなどにも使います)。
1つ目の文は現在進行形で2つ目は現在形になっていますね。
この2つの違いはどこにあるのかと言うと、例文1は「今現在していること=黒いワンピースを身につけている」を表していて、例文2は「いつもしていること=読書する時に眼鏡をかける」を表しています。
進行形にならないと言われる “wear” は2番の “wear” のことで、1番の “wear” に関しては現在進行形・過去進行形いずれも普通に使います。
進行形にする “wear” と、しない “wear”
先ほどの2つの例文をもう少しだけ詳しく見てみると、
- Tracey is wearing a simple black dress.
- He wears glasses for reading.
1の例文は現在進行形なので「始まり」と「終わり」が意識された時間的区切りの中の一瞬を切り取って「今〜している」という意味です。なので「今現在着ている(身につけている)」ということですが、これは言い換えると、着始めてからまだ着終わっていないという意味での「着ている」です。
それに対して2は読書をする時に眼鏡をかけるという習慣を表しているだけで「今現在、この瞬間に眼鏡をかけている」と言っているのではありません。
状態動詞という言葉を使うから難しそうに聞こえるだけで【現在形は「いつもそうだ」という習慣を表す時に使う】という黄金ルールを覚えていれば簡単ですよね。
“wear” の使い方クイズ
では、ここでクイズです。以下の文のそれぞれの( )には進行形か現在形のどちらが入ると思いますか?助動詞や主語など必要なものは適宜補ってくださいね。
- What( )at home?
家では何着てるの? - He always( )black.
彼はいつも黒い服を着ている - My husband( )his wedding ring because he doesn’t like jewellery.
夫は結婚指輪していません。宝飾品類が好きではないので - What ( )when you saw him?
君が見た時、その男は何を着ていた?
答えは、4以外は全て現在形で、4は過去進行形です。
- What do you wear at home?
家では何着てるの? - He always wears black.
彼はいつも黒い服を着ている - My husband doesn’t wear his wedding ring because he doesn’t like jewellery.
夫は結婚指輪していません。宝飾品類が好きではないので - What was the guy wearing when you saw him?
君が見た時、その男は何を着ていた?
どうでしたか?簡単でしたね。
「着ている、身につけている」のように「〜(し)ている」という日本語訳に惑わされないで、意味を考えて、いつもそうなのか(そうだったのか)、もしくは一時的なある時のことを言っているのかで使い分けてくださいね。
■”always” と進行形を一緒に使うと、ちょっと特別な意味になります↓
“wear” には目的語が必要
最後に少しだけ。
とにかく明るい安村さんが “Don’t worry. I’m wearing.” と言い放つと、審査員の女性が “Pants!” と叫んでいたのが印象的でした。
そうなんです。”wear” には必ず目的語が必要なんです。言い換えると、”wear” は「〜を身につけている」という意味なので目的語がないと気持ち悪いんです。「安心してください。をはいてますよ」と言っているようなものなので「パーンツ!」と目的語を入れたくなったのかもしれませんね。
■英語の “pants” が表す意味はイギリス英語とアメリカ英語でちょっと違います↓
■【現在形】と【現在進行形】の違いはこちらで紹介しています↓
■”wear” と “put on” の違いはこちらで紹介しています↓それ以外のネイティブが使う「着ている」の表現も紹介しているので、ぜひ合わせてご覧ください。
安村さんの登場する場面のフルバージョンはこちらで見られます↓何度見ても笑ってしまいます(笑)
■「超面白い」「超ウケる」って英語で何て言う?
■動画の最後あたりに出てくる審査員のコメント “You definitely have balls.” の意味はこちらで紹介しています↓
■女性の審査員のコメント “You’re absolutely unique.” の意味とは?
■準決勝でいったん敗退した時に安村さんがMCから言われた “Commiserations.” の意味とは?