“A little kindness goes a long way.”
先日スーパーに行ってみると、商品棚にこう書かれた貼り紙がしてありました。
では、これってどんな意味だと思いますか?
“A little kindness goes a long way” の意味とは?
日本では東京がロックダウンされるかもしれないということで、スーパーに人が殺到したようですね。
ニュージーランドでも同じような現象が起こり、特定の商品がすぐに売り切れるようになりました。そんな中、商品棚に貼ってあったのがこんな紙です↓
A little kindness goes a long way.
To make sure there’s some for everyone, there’s now a limit of two per customer on these items.
後半部分の “To 〜” 以降は「皆さんに商品が行き渡るように、これらの商品には現在『お一人様2個まで』の個数制限がかかっています」ということですね。
問題は最初の部分です。直訳すると「ちょっとした親切(思いやり)が長い距離を行く」です。でも、これではちょっと意味が分かりません。
実はこれは「ちょっとした親切(思いやり)が大きな効果をもたらす」という意味になるんです。
(最後の “Thanks for your understanding” の意味は以下のコラムで紹介しています)
“go a long way” の意味
実は “a long way” には「長い道のり、遠い距離」という意味以外にも、こんな意味があるのをご存じでしたか?
very much, far, or a great amount or degree
(ロングマン現代英英辞典)
「とても」を表すことがあるんですね。そこから “go a long way” は “help very much” の意味で「〜はとても役立つ」「〜はとても効果がある」といった意味で使われます。
なので、”a little 〜 goes a long way” が、
used to say that only a small amount of something is needed or has a great effect
(ロングマン現代英英辞典)
という意味になるんですね。つまり「ほんの少しの〜が大きな効果をもたらす」ですね。「多くは必要なくて、必要なのは少しの〜」みたいなニュアンスでも使われます。
例えば、何かの募金や寄付をお願いするときなどに、
- Every bit helps, even $5 goes a long way.
と書かれてあったら「どんな少額でも、たとえ5ドルでもとても役に立ちます」ということになります。同じように、
- A little knowledge goes a long way.
- A little smile goes a long way.
- A little help goes a long way.
- A little effort goes a long way.
- A little goes a long way.
みたいに使われます。なので、スーパーの張り紙にあった、
- A little kindness goes a long way.
が「ほんの少しの思いやりが大きな効果をもたらします」になるんですね。
私が知る限り、ニュージーランドのスーパーでは日本と違って「1人2点まで」といった個数制限を設けることはあまりないのですが、パニック買いや買い占めをする人に「他人への思いやりを」というメッセージをポジティブに表現している感じですね。
■同じく “a long way” を使った “a long way off” の意味と使い方はこちらで紹介しています↓
“kind” と言えば…
ここからはかなり余談になります。お時間のある方はお付き合いいただけたら嬉しいです(笑)
“kind” と言えば、私が最近とても印象的だなと思っていることがあって、それはニュージーランド政府がCOVID-19対策に「Be kind」という言葉を盛んに使っていることです。
以下のスクリーンショットは政府のCOVID-19専用サイトのものなのですが、COVID-19対策として「家にいる」「手を洗う」よりも先に「Be kind」と書かれているのが分かります。
(covid19.govt.nzより)
ちょっと字が小さいので読みにくいかもしれませんが、
Make a difference by supporting friends, neighbours and whānau, especially the elderly and vulnerable.
と書かれています。「友人・近所の人・家族、特に年配の人とvulnerableな人をサポートしましょう」と、助け合うこと・思いやりの大切さを強調しています。
ここには書かれていませんが、最前線で戦ってくれている医療関係者への感謝と敬意も忘れてはいけません。彼らの負担にならないためにも自分ができることはやる(外出自粛・social distancingなど)ことも “Be kind” につながると思います。
また、ロックダウン(全土封鎖)に入る前に首相自らが国民に何度も訴えているメッセージが、
Be kind, stay home, save lives
です。首相自身のfacebookページにも投稿されています↓
ニュージーランド政府を率いているこのJacinda Ardern首相は、心に訴えて人を動かすのに長けている人だなと私は思っています。
ちょうど1年前にニュージーランドのモスクで銃撃テロがあった際にも、標的になったイスラム教徒の人たちを “They are us” と表現し、事件直後に首相自らヒジャブを身につけてムスリムコミュニティーに駆けつけて寄り添い「私たちはひとつ」という方向性を真っ先に国民に示したのも記憶に新しいです。
そして今回の新型コロナでも、ロックダウンに入ることを発表した会見の中で、
- Together, we must stop that happening, and we can.
- We’re in this together and must unite against COVID-19.
- I understand that, people are afraid and anxious. We will play that role for you. What we need from you, is you to support others.
- We will get through this together, but only if we stick together. Be strong and be kind.
のように “together” や “unite” という言葉で国民へ「ひとつとなることの大切さ」を訴え、「みなさんの不安を理解しています」と共感し、そして「support others」「Be kind」と締めくくりました↓
非常事態宣言が出て国全体がロックダウンすると言われたら大パニックが起こってもおかしくないですが、その前から国民の心に訴えかけながら、明確な行動指針を打ち出していたので、パニックは最小限に抑えられたのではないかと思います。
今はとても厳しいロックダウンで、スーパーへの必要な買い物と医者・近所の散歩以外の外出はほとんど認められておらず、政府が決めた業種以外は全て在宅勤務が命じられ、それができない場合は休業を余儀なくされています。
それらを犠牲にしてまでも今重要なのは「人の動きを止めること」つまり「Stay at home」です。ニュージーランド警察はユーモアを交えて、SNSに以下のような投稿をしました↓
日本でも緊迫感が増してきましたが、この週末、特別な用事がない方はテレビの前でゴロゴロして人類を救いましょう。
Be kind, stay home, save lives.
■新型コロナの拡大を止めるために大事な “do one’s bit” の意味とは?
■新型コロナウイルス対策として “social distancing” もとっても大事です↓
■記事の中で登場した “vulnerable” の意味はこちらで紹介しています↓
■”stay at home” と “stay home” の違いは?
■”I’m home” と “I’m at home” の違いはこちら↓
■「非常事態宣言」「緊急事態宣言」を英語で言うと?