新型コロナウイルスのニュースではたくさんのカタカナ語が使われていますよね。
例えば「オーバーシュート」「クラスター」「ロックダウン」「ソーシャルディスタンス」などがあります。
これらは全て英語から来ているように感じると思いますが、実は「オーバーシュート」は英語の “overshoot” の本来の意味とはちょっと違う意味で使われているんです。
「オーバーシュート」の意味は「感染爆発」ではない?
カタカナ語の「オーバーシュート」は日本では「感染爆発」という意味で使われていますよね。
東京都の小池知事が記者会見で『感染爆発 重大局面〔オーバーシュート 重大局面〕』と書かれたボードを掲げていたのも記憶に新しいです。
また、新型コロナのクラスター対策専門家のTwitterにもこんなふうに書かれています↓
『オーバーシュート』とはー
爆発的な感染者の増加のことをいいます。2〜3日で累積感染者数が倍増するようなスピードの感染者数の増加が継続的に続く状態をいいます。
このような状況では、外出や移動の制限など速やかな対策が必要になります。
— 新型コロナクラスター対策専門家 (@ClusterJapan) April 3, 2020
ただ、この「オーバーシュート」という言葉、英語メディアで「感染爆発」の意味で使われているかというと、そうではありません。
英語の “overshoot” の本当の意味
“overshoot” の意味を英英辞書で調べてみると、こう書かれています↓
- to go further than the place you intend to stop or turn
- to do more or to spend more money than you originally planned
(オックスフォード現代英英辞典)
なんだかちょっと分かりにくいですが、1番目の意味は「(目的地など)を行き過ぎる」で、例えば、
- The plane overshot the runway and skidded into the water.
その飛行機は滑走路をオーバーランして横滑りし、海に突っ込んだ
みたいに使われます。そして2番目は「予定していた額を超過して支出する」ということです。
- The Government overshot its budget deficit target.
政府の財政赤字は目標額を超過した
つまり、”overshoot” という単語の大きなイメージとしては、目標値や限界値のラインがあって、それよりも超えてしまう・行き過ぎてしまうというニュアンスです。
他にも少し調べてみたのですが、生態学でも “overshoot” という単語は使われていて「ある環境において維持できる生物の個体数の上限を超えてしまう」といった意味でも使われるようです。
例えば、”overshoot” を名詞で使った “population overshoot” は「人口超過(人口過多)」、つまり、その環境にある食糧や水・エネルギーなどが支えられる人の数を超えてしまうということです。”ecological overshoot” とも言うようですが「限界値を超えてしまう」イメージに合っていますよね。
イギリス政府のチーフメディカルアドバイザーを務める方が “overshoot” のことを語っている記事がありました。そこで言われているのは、
if you let an epidemic run its full course you get what’s called overshoot where more people get infected than you would need if it were to run at a lower peak. Actually by lowering the peak you reduce the overall number of people who will get the infection.
(LBC News)
感染のピークを低く抑えることで、高いピークを迎えてしまった場合よりも感染者の総数が少なく抑えられるということです。そして、何も対策をしなければ、低いピークに抑えた場合の「感染者の数はこれで済む」という数よりも上を行った多くの感染者数が出てしまう、この状態を言っているのが “overshoot” です。
これは単なる「感染爆発、爆発的な感染者の増加」という意味ではありませんよね。
「感染爆発」を英語で言うと?
では「感染爆発」や「爆発的な感染者の増加」は英語でどう表現するのでしょうか?
私自身がよく目にする表現をいくつか挙げてみますが、まずキーワードとしては、
- explosive:爆発(性)の、(増加の仕方が)急激な
- exponential:(数学的に)指数関数的な、(増加の仕方が)急激な
という2つの形容詞があります。そして、これらの形容詞の後ろに、
- rise、growth、increase:増加
- spread:拡散
- surge、jump、spike:急増
そして、その後ろに “in cases” や “in infections” などを続けて「感染爆発」「爆発的な感染者の増加」が表現されているのをよく目にします。例えば、
- explosive rise in coronavirus cases
- explosive growth in infections
- explosive surge in infections
- explosive increase in cases of the coronavirus
- exponential growth in the number of new cases
- exponential increase in cases
- exponential spike in coronavirus cases
- exponential spread of the virus
みたいな感じですね。
- We need to do everything we can do to prevent an explosive rise in coronavirus cases.
コロナウイルスの感染爆発を防ぐために私たちはできることを全てしないといけない - We all need to work together to avoid an explosive growth in infections.
感染爆発を避けるために私たち全員が一つになって取り組まないといけない
他にも、簡単に言うとしたら “massive outbreak” や “recent surge in coronavirus/Covid-19 cases(最近の感染者の増加)”みたいにも言えるかなと思います。
「第2波」を英語で言うと?
ちなみに「第2波」は英語でもそのまま “second wave” です(笑)
- second wave of COVID-19
で「新型コロナウイルス感染症の第2波」を表しますが、他にもいろんな表現が使われていて、
- second wave of coronavirus
- second wave of infections
- second wave of coronavirus infections
なども使われていますよ。
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